旧帝大医学部の基礎研究者が、定年後、学部間の綱引きのなかで「無難な候補」として一躍、学長候補となり、なんと学長になってしまった。時は、小泉改革の聖域なき構造改革の真っただ中。 本書は、地方中堅国立大学の素人学長が、独立行政法人化前後の激動の時代を、7年に渡り、「文部省におもねず、旧帝大を恐れず、正しいと信じていることを発信」し続けたその集大成である。極端な効率化を求めて、国立では東大・京大、私学では早稲田と慶應の二人勝ち状態が、いかの我が国の高等教育にとって危険であるか、それが引いては我が国の文化・文明に悪影響を及ぼすかを記した鋭い指摘が多数含まれています。しかし、不平・不満の羅列ではなく、ひたむきに問題解決をしようと努力した著者の姿勢と、相当な煮え湯を飲まされたであろう官僚に対してさえ一定の共感を温かい言葉で残しているので読後感は爽やかです。このような学長が出現する余地を作ったことは国立大学独立法人化の大きな功績と言えるでしょう。地方国立大学が果たす地域シンクタンク機能など様々な視点で考えさせてくれました。思わず、黒木学長御苦労さま!と読了後言ってしまいました。大学関係者が読まれると勇気とやる気が鼓舞されること請け合いです。