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萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫)
 
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萩を揺らす雨―紅雲町珈琲屋こよみ (文春文庫) [文庫]

吉永 南央
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 580 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

観音さまが見下ろす街で、コーヒー豆と和食器の店「小蔵屋」を営む気丈なおばあさん、杉浦草。人々を温かく見守り続ける彼女は、無料のコーヒーを目当てに訪れる常連たちとの会話がきっかけで、街で起きた小さな事件の存在に気づく。オール讀物推理小説新人賞受賞のデビュー作を含む「日常の謎」を解く連作短編集。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

吉永 南央
1964年埼玉県生まれ。群馬県立女子大学卒業。2004年、「紅雲町のお草」で、第43回オール讀物推理小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 268ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2011/4/8)
  • ISBN-10: 4167813017
  • ISBN-13: 978-4167813017
  • 発売日: 2011/4/8
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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8 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
ちょっと時間が空き、何か軽い読み物はないか探していたら、ほのぼのした表紙と”コージーミステリー”という文字が目にとまり手にとりました。確かに、老いという重いテーマにも触れているのですが、どこかさらりとしていて暗さは感じられず、梅雨と珈琲が似合うな、と思いました。主人公の草さんは、紹介文にあるような(おばーちゃん探偵)とか(日本版ミスマープル)ともちょっと違うような気がします。もし、草さんがオーナーの珈琲ショップが実在するなら、間違いなく私は常連になりますね。読んでいるうちに、いい珈琲の香りがどこからともなく漂ってきて、そのお店に居るような心地良さを感じることができます。まもなく続編が文庫本で出るらしいので、これもできればスタバとかでゆらりと読んでみたいです。
このレビューは参考になりましたか?
10 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By suihou トップ50レビュアー
Amazonが確認した購入
 読んでからしばらくは、重いものが心の中にあれこれたゆたって、感想がひとつに定まりませんでした。

 大船観音に見下ろされる町の和風喫茶『小蔵屋』を営み、美味しい試供品の無料コーヒーも出してくれる、76歳の草おばあちゃん。
 この手の翻訳ものだと、もっとユーモラスでしゃきしゃきして口がへらず、鼻っ柱が強く、まわりのみんなも頼るようなスーパーおばあさんが多いけれど、この草さんは日本のおばあちゃんで、凜と背筋はのびているけれど、ひかえめで優しく受容的。

 ご近所さんのことが気になって、ようすを探ったりはしますが、それでも行動的な名物おばあさん、とはほど遠い。
 扱われている事件も、家族内虐待とか、昔の幼なじみとの軽い確執とか、意地っぱりの青年の裏側とか、たいへんリアルで、日常的に起こりうることで、冗談にできないちょっと苦めのテイストです。

 一般の小説なら、これらの事件をそのまま投げ出せば、「人生の裏側をなまなましく描いた」と言われるような素材ですが、作者はこれを「コージーミステリ」というフォーミュラにはめています。コージーミステリなら、事件は必ず解決、探偵は不死身(死んだらシリーズは終わるから)、ほっこり、ほんわか、ご町内の和、という「こわれない幸せな日常」がキープされるお約束です。
 この物語では、そのコージーミステリの「幸福の約束」が必ずしも果たされてはいません。特に「老い」の哀しみのようなものがそれを妨げています。けれど、普通の小説では得られない、ミステリならではの「救い(の約束)」も感じられます。
 
 コージーミステリとしては、コーヒーのように苦みがあるけれども、それを和らげるミルクやお砂糖があり、それこそ長い人生が草さんにもたらした癒しの目線でしょうか。
 
 人生の悲哀という素材をすくいあげるのに、ひとつの物語形式を採用し、それが内容とお互い微妙な均衡を保ちつつ・・・大船の四季の自然の中に溶け込んで救われている、そのぎりぎりのバランスの感じが、美しいです。

 ラストの表題作は、草さんの友だちの、決して楽ではなかった「女の一生」を描いていますが、草さんの目からは「これでよかった」とおちつく、そんなしっとりとした後味です。
 人生の重さを、すっと軽くする。コージーミステリのそんな浮揚力に、改めて気づかされます。
 そしてこのシリーズでは、それが白々しくなく、自然体で、いつのまにかなされている。
 読み終えて、何日かあとになってから、しずかに気持ちよく、心の奥へほぐれていくのがわかります。
 
「小蔵屋」は心の中の安息の家の一軒になりそうです。
 

 
このレビューは参考になりましたか?
12 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
「小蔵屋」という和食器とコーヒー豆の店を、年老いてもなお気丈に切り盛りしている
杉浦草。ある日草は、友人である大谷から、鈴子という女性についての頼まれごとを
引き受ける。その女性の息子と関わりを持ったことから、草はちょっとした事件に巻き
込まれていく・・・。表題作「萩を揺らす雨」を含む5編を収録。

「おばあさん探偵が日常の謎を解く」という設定だが、ミステリーの謎解きの面白さを
味わうというより、むしろ悲哀を感じる内容だった。怪しいと思われる家の周りを歩いて
いると、痴呆の徘徊者だと思われてしまう。草はそういう年齢なのだ。どんなにがんばっ
ても、世間の「草は高齢者」という考えを変えることはできない。悲しいけれど、残酷な
現実を突きつけられてしまう。けれど、草は前向きだ。草のように、年老いても生きがいを
持ち、毎日を過ごすことができたらどんなにいいだろう。こういうふうに年をとりたいものだ。
しっとりとした味わいを持つ作品だと思う。さまざまな問題も含んでいて、考えさせられる
ことも多かった。
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