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29 人中、24人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
カンヌ・カメラドール受賞作,
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レビュー対象商品: 萌の朱雀 [DVD] (DVD)
この映画の魅力については、いろいろと評価されているのですが、最初見たときは、何と地味な映画なんだろうか、という感想でした。すべてが、真面目に作りました、という感じで、派手なところが、一切ない。 おまけに、筋立ても一回見ただけではよく分からない、という構成に最初はやや戸惑いました。 しかも、役者はほとんどが素人で初々しく、録音は独特のオフ録音感覚。 ただ、観た後に何かが確実に、心に残る映画であることは確かで、映像の一コマ一コマが予感のように残りました。 このささやかな残り火のような感慨はいったい何だろう?とずっと考えながら、この監督の作品を追ってきました。 そして、先日、映画館で話題の「殯の森」を見ました。 この映画は結論から言えば、まさに現代では異質の傑作で、河瀬監督の「作家の魂」というものに深く心を揺さぶられる思いがしました。 デビュー作である本作に比べると、「殯の森」の映像の密度は比較にならないくらい濃厚で、録音も自然の音が生き生きと蘇るような生気を持って素晴らしいものでした。 役者は「役」という枠組を超えて、すでに映画の中に人物を生きている。 しかし、考えてみれば、すべては「萌の朱雀」で萌芽として露わになっていたんだ、と初めて気が付きました。 河瀬映画の「はじまりの映画」として、この「萌の朱雀」は、やや分かりにくい部分が確かにありますが、その映像の奥底を流れる「たましい」はやはり揺るがないものがある、と強く感じました。 それから、第三者として感じたことですが、読んでいて不愉快な中傷と作為ではなく、貴重なエネルギーは好きな映画のために使いませんか。
19 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
初心の映画,
By バルバラ (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 萌の朱雀 [DVD] (DVD)
弱冠26歳でカンヌ新人監督賞を受賞した劇場映画第一作目。映画技法としてはかなり未熟な点もあるが、その込められたその想いがじわじわと伝わってくる秀作。 吉野の山村に住む高校生みちると、その父母と祖母、父の姉の息子、が主な登場人物で、 物語は考え込むような複雑な心理劇ではなく、意外に素直に入り込める。 ただ、何気ない台詞を少しでも聞き逃すと、人物の関係や物語の結節点がやや分かり難くくなる。 この点がこの映画を見るときのポイントになるのかもしれない。 最新作「殯の森」の主演女優・尾野真千知子が演じる高校生みちるが初々しく、父親役の 國村隼も寡黙で孤独な人生を生きる父親を的確に演じている。 素人の俳優が中心になっているため、よく見るとぎこちなく見えるシーンも多々あるが、 そもそも河瀬監督は俳優に「上手く演じさせる」というスタンスを採っていないので、 それが解ればこの映画に対する見方はすっかり変わる。 訓練や演出の追い込みによって役者の演技を引き出すのではなく、その瞬間のリアリティー を最大限に抽出しようとする直感的な意思を感じさせるタイプの監督なので、ふっと表れる その場の空気を非常に大切にしている、ということが映像からも伝わってくる。 そういう意味で河瀬監督は、細部を丁寧に作り込む現実的な技巧派ではなく、いわば 「映像の向こう側」にあるものの比重が大きく、独自の世界を持っていることが分かる。 映像は「目に見える世界」がすべてだが、観客はそれぞれの心のスクリーンに その映画を写し換えて見ている。 それぞれの人の想いが投影されることによって、ようやく映画は完成する。 映画の時間は観た人の中でそれからも続いていく。 自分にとっていい映画とはそういうものではないだろうか。
9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
喪失と無常,
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レビュー対象商品: 萌の朱雀 [DVD] (DVD)
ひとつの家族の朝の光景がはじまる。 釜戸のある土間、やがて朝の食卓が、丸いちゃぶ台に揃う。開け放たれた障子と窓の向こうに、視界を遮るものなく悠然と緑の山肌が見渡せる。 家族は常にこの風景と共に暮らしている。 しかし、この映画の家族の静かな暮しは、過疎という時間の進行からも、やがて解体へと進むのだが。 台詞が抑制され、物語は極端に感じられる寸前まで説明描写を避けて省略の形をとっている。 そのぶん観客は集中力と静かな観察眼が必要だ。己の雑念を排して映画を凝視していなくてはいけない。 「省略」がとっても大好きなぼくも、この登場する家族の関係も、時間の経過も、読みとり、想像力でついていくのに、ちょっと労を要した。 しかし、物語は元来曖昧なままで観続けていて良い場合も多い。はっきりと説明されるものであれば、映像として感じとっていく観客の力はいらないだろうから。 音の繊細さ脆弱さ、物語が寡黙な表情で語られるようなフイルム映像を堪能するには、静かな環境がこちらも必要だ。 ドキュメンタリーを思わせる感触ではじまるのだけれど、やがてひとつの家族の物語が愛おしく大切に語り終えられていくのを感じる。 やがて不在となる父親、不在その後のそれぞれの家族の、その思いが静かで悲しくて、解体していく家族のかたちが儚くて、とても切ない。それは「無常」という思いの姿、域までも感じさせる。 思えば、この映画の描く喪失感にも、静かに耐えていくような、おばあちゃんの姿も心に残る。
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