監督はハンガリーのサボー・イシュトヴァーン、「メフィスト」(1981年)でアカデミー賞を獲得、ベルリンやカンヌ映画祭等、欧州では高い評価を受ける。
撮影は同じくハンガリー人、「海の上のピアニスト」「マレーナ」「アドルフの画集」等、ノスタルジックで美しい映像に定評のある、コルタイ・ラヨシュ。
前述の「メフィスト」他、「太陽の雫」など、サボー監督と長年一緒に仕事をするハンガリー最強のコンビ。
撮影は、主に屋外シーンは英国で、屋内は当時の雰囲気が残るハンガリーで行われた。
原作は、「月と6ペンス」で有名なサマセット・モームの「劇場」。
舞台女優として一定の評価も受け、子育ても一段落、中年に差し掛かり、惰性で毎日を過ごしているジュリア(A.ベニング)。
一方、元・俳優の夫マイケル(J.アイアンズ)も、現在は劇場の興行主として、経理と自身の体形維持にしか興味がない。
そんな2人の所へ、ジュリアのファンだという青年トムと、女優の卵エイヴィスが現れ、悲喜こもごもの騒動が巻き起こる。
原作では、ジュリアの回想として、駆け出しの頃に演技指導を受けたジミー・ラングドン(M.ガンボン)の事や、マイケルに夢中だった頃の事などが順を追って語られるが、本作ではこの前半部分が省かれた為、ラングドンの扱いが「亡霊」(しかも、妙に現実味のある撮られ方で。)というやや無理のある処理となった点と、かつての「情熱的な恋と結婚」の成れの果てである「現在」との対比が希薄になった事は少し残念。
ベニングは、生き生きと感情豊かに気ままなジュリアを演じ、見ている者を惹きつける。
また、エレガントでシニカルな紳士はアイアンズのはまり役。
ロケーション、衣装、選曲ともに、1930年代の「ヨーロッパ」が見事に再現され、見ているだけでも楽しい。
(ほんの一瞬ですが、楽屋のジュリアを呼びに来る劇場スタッフの役で、アイアンズの次男、マックス君も登場します。)