本書は、交易という観点から人類の歴史をたどりつつ、いかにわれわれを豊かにしてきたのかをたどる壮大な物語である。
歴史を貿易という視点で眺めると、また新たな世界が見えてくる。
なかでも、大航海時代のポルトガル、オランダそしてイギリスの領土やスパイスや絹織物そして砂糖など産物をめぐる争いが生き生きと描かれている。
それぞれ私利私欲のために開発や交易がなされてきたのに、それが結果的には世界中を豊かにしてきたことがよくわかる。
また、アダム・スミスやリカードが生きていた当時の様子から、彼らが生み出した書物の時代的背景が明らかになる。
さらに、本書の主題とは異なるが、ポルトガルやオランダが東南アジアや中国で行ってきた海賊以上の略奪と殺戮行為をみると、日本における鉄砲伝来とか長崎出島など彼らへの印象との落差の大きさを感じる。当時からわれわれは、外国との交渉に当たってうまく対処してきたのかもしれない。
それにしても、保護貿易と自由貿易の主張の対立は、現代に至るまで相変わらず続いていることが不思議でならない。
たとえば、イギリスの綿貿易への反対運動と保護貿易主義者の言い分。どこか、この国の市場原理主義批判に相通じる。
本書の最後に著者は言う。「シュメールからシアトルに至る貿易の長い旅をへてもなお人類が進歩していないことは疑いようがない」