地球上では過去に少なくとも三度生物の大絶滅が起きていると言われるが、そのうちの一回は、巨大なホットプルームによる環境変化だったらしい。このこととは直接関係しないが、地質学の有力学説を基盤に、ホットプルームの活性化により、地球温暖化など比ではないほどの海面上昇が起きた未来を描く。
短編「魚船・獣船」で描かれた世界を、大ボリュームで描き込んだ。海洋民の女性オサ・ツキソメと、日本外洋公館の公使・青澄およびその補助AIが主な視点人物となる。
海洋民と地上民それぞれの生活を異世界描写として描きながら、両者の紛争が物語の主軸となる。時には海洋活劇として、時には政治ドラマとしてまた時には電脳空間の駆け引きとして…。
また、謎に満ちた存在としてツキソメ自身の出自も重要な要素となる。たくさんのアイデアがちりばめられた贅沢な未来異世界の物語だ。いくつか謎は残っている。
例えば加速的に変異する獣船とアカシデウニの毒との共通点は、一度ほのめかされたままその後言及がない。だが、あとがきによれば作者はまだまだ書きたいそうだ。獣船の生態研究や、獣船駆除に従事する者達の物語、ムツメクラゲ誕生の忌まわしい過去や、魚船の遺伝子デザイン秘話など、まだまだ読みたいエピソードが多い。
でもひとまず、たっぷり読んで満足。
最後に示された死生観・人類観は、これまで読んだことのない新しいものだった。賛否両論起きそうな新見解だ。