登録情報
|
|
あなたの意見や感想を教えてください:
|
||||||||||||||||||||||
|
最も参考になったカスタマーレビュー
24 人中、22人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
贅沢にアイデアを詰め込まれた未来異世界,
By
レビュー対象商品: 華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) (単行本(ソフトカバー))
地球上では過去に少なくとも三度生物の大絶滅が起きていると言われるが、そのうちの一回は、巨大なホットプルームによる環境変化だったらしい。このこととは直接関係しないが、地質学の有力学説を基盤に、ホットプルームの活性化により、地球温暖化など比ではないほどの海面上昇が起きた未来を描く。短編「魚船・獣船」で描かれた世界を、大ボリュームで描き込んだ。海洋民の女性オサ・ツキソメと、日本外洋公館の公使・青澄およびその補助AIが主な視点人物となる。 海洋民と地上民それぞれの生活を異世界描写として描きながら、両者の紛争が物語の主軸となる。時には海洋活劇として、時には政治ドラマとしてまた時には電脳空間の駆け引きとして…。 また、謎に満ちた存在としてツキソメ自身の出自も重要な要素となる。たくさんのアイデアがちりばめられた贅沢な未来異世界の物語だ。いくつか謎は残っている。 例えば加速的に変異する獣船とアカシデウニの毒との共通点は、一度ほのめかされたままその後言及がない。だが、あとがきによれば作者はまだまだ書きたいそうだ。獣船の生態研究や、獣船駆除に従事する者達の物語、ムツメクラゲ誕生の忌まわしい過去や、魚船の遺伝子デザイン秘話など、まだまだ読みたいエピソードが多い。 でもひとまず、たっぷり読んで満足。 最後に示された死生観・人類観は、これまで読んだことのない新しいものだった。賛否両論起きそうな新見解だ。
19 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
大作だが一挙に読了,
By
レビュー対象商品: 華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) (単行本(ソフトカバー))
同じ日の読売新聞の書評欄に載っていた、乾ルカ『蜜姫村』と一緒に購入。出来は雲泥の差。フィクション、特に現実から離れた設定の物語は周到に読者にウソを吐き通して、そこにいかに心情的なリアリティを立ち昇らせるか、それが肝になってくると思う。そこを全くやり切れていないのが『蜜姫村』、見事にやりきっているのがこの作品。両極端の作品なのに書評ではどちらも高評価なのは何なんだろう。プロローグで舞台の設定が周到になされて物語が滑り出す。映画『ウォーターワールド』の様な世界だが温暖化のみで説明されるのでなく、地殻変動を原因とする「地球惑星科学」的なアプローチで語られる。 物語も単純な善玉対悪玉的な設定ではなく、陸上民 対 海上民、国家連合間の対立、組織上部 対 現場など周到に絡み合った舞台が用意されている。 物語を面白く展開している要素のひとつとして「アシスタント知性体」が人間の思考/行動を補助する設定がある。モノローグになるところが、主人公「青澄(あおずみ)」と彼のアシスタント知性体「ミキ」との会話で構成されることになる。むしろ「僕」という一人称を使うこのアシスタント「ミキ」、彼の方が主人公かもしれない。 他の登場人物との交わりも当然本人同士/アシスタント知性体同士との二層構造に。この設定が物語の展開のなかで非常に効いてくる。分量の多いこの本を一気に読ませるテクニックとしても見事に効果を発揮していると思う。 壮大な物語を通して考えさせられるのは、人類にとっての正義について。マイケル・サンデルのハーバード白熱教室の例題で出てきそうなテーマ。(偶然か意図的か挟み込まれた新刊案内のチラシにこの本の宣伝が載っていたり・・) 差し詰め人類が置かれた状況から逃れるために「功利主義」的な考え方で「幸福の最大化」を選択し続けた末の世界がこの物語の舞台ともいえる。青澄は彼の「美徳」を貫くため心身をすり減らしていく。そして「美徳」を貫いた結果が果たして正義であるのか青澄は常に懊悩する。 「美徳」がシンプルに美徳で終わるとは限らない現実世界でも起こる状況を、フィクションの世界にリアリティをもって立ち上げることに作者は成功している。見事にウソで読者を酔わせてくれる。SFの醍醐味だと思う。 作者はこの舞台を利用してまた物語を書く意思がある様子。複数の物語を紡ぎ出しても磨り減らない壮大で強固な世界を作者は用意出来たと思う。次回作が早く読みたい。オススメです。
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ストーリーの骨子が官僚たちのネゴシエーションという珍しい作品,
By
レビュー対象商品: 華竜の宮 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション) (単行本(ソフトカバー))
第32回日本SF大賞受賞作。近未来を舞台とした海洋SFを謳っているがストーリーの骨子は、官僚たちのネゴシエーションという珍しい作品。 もちろんSF的設定や世界観、仮想生物たちの生き生きとした姿は それはそれで素晴らしく、脳内にリアルに立ち上がってくる。 しかし、最初から最後まで物語を引っ張っていくのは、 組織の末端で所属組織の論理や面子に縛られながらも、 自らの倫理にも誠実であらんとする官僚たちの姿勢である。 少年少女たちは、いつでも革命家のように潔く、 キャッチーでピュアな世直しに惹かれてしまうものだ。 しかし何時の世にもきちんとした次の世を作っていくのは 一見つまらなく、歯がゆい大人たちの、膨大な事務量に裏付けされた ネゴシエーションの積み上げなのである。 旧勢力との闘争と、早急な世直しとそのカタルシスで、 社会を語ってしまう愚に対し、本作は一見つまらない ネゴシエーションの場面を粛々と積み上げていくことにより、 リアリティある人間社会の描写に成功している。 それが本作を重みあるものにしていると信じている。
あなたの意見や感想を教えてください: 自分のレビューを作成する
|
最近のカスタマーレビュー
5つ星のうち 4.0
人は神様になってまで生き延びるだけの価値があるのか?
天変地異により、陸の大部分が海に沈んだ数百年後の地球が舞台です。... 続きを読む
投稿日: 11か月前 投稿者: 藤崎健一
|
|
この商品のクチコミ一覧
クチコミを検索
|
関連するクチコミ一覧
|
|
|
|