近代日本史に硬軟両面で常に話題の中心であり続けた華族について、歴史を追いつつ概略を紹介する。公家、武家のほか、維新の功労者、財界人、宗教家のほか、南朝忠臣の末裔というかなり胡散臭い家まで、多種多様な上流階級人が「皇室の藩塀」の名の下、「華族」として一括りにされたという。
華族については色恋沙汰、苦しい台所事情などのスキャンダラスな軟派な面と、戦前いわゆる華族社会の中でも本流である近衛、木戸、有馬といった「革新華族」が台頭し、貴族院や宮中を舞台に、軍部と連携してファシズムを推し進めた政治的側面の両面がある。本書は両面を詳しく紹介するほか、明治の華族批判、朝鮮貴族、華族の職業分布などこれまで余り知られていなかった話題にもじっくり触れるなど、紙数の限られた中、できるだけ多面的に華族の実像を解明している。また、書中に写真や一覧表が多いのがとてもいい。特に「日露戦後叙爵者一覧」「貴族院会派系統図」などの一覧表は、簡便な華族関連資料として重宝するし、読む際にイメージも湧きやすい。
これほど近代社会、政治に大きな影響を与えたにもかかわらず、華族制度自体の通史がなかったのは驚きでもある。本書には、斬新な解釈があるわけではないが、これまでどこか一部分にしか焦点を当ててこられなかった華族について、広く知識を提供してくれる。中公新書らしい、重厚さのある歴史書といえる。