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華の碑文―世阿弥元清 (中公文庫)
 
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華の碑文―世阿弥元清 (中公文庫) [文庫]

杉本 苑子
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 文庫: 405ページ
  • 出版社: 中央公論新社 (1977/01)
  • ISBN-10: 4122004624
  • ISBN-13: 978-4122004627
  • 発売日: 1977/01
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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By 木白
 この『華の碑文』は、サブタイトルにあるように能の大成者・世阿弥元清の生涯を、弟にあたる観世四郎元仲の目を通して描いた小説です。

 父・観阿弥による「曲舞」導入による猿楽能の変革、今熊野の演能による若将軍・足利義満との出会いと寵愛による栄光、観阿弥の死と近江猿楽・道阿弥への師事による方向性の転換、義満の死による没落、観世元重(四郎の子、後の音阿弥)の栄達と対照的に息子である観世元雅・元能兄弟の悲劇、そして自身の佐渡配島。

 こうした世阿弥という1人の天才の涯を、南北朝という血生臭い時代を背景にして、描ききっているように思います。

 タイトルにある「華」。『風姿花伝』のほか『花鏡』『至花道』など著書の題にも示される通り、生涯「花」を求め続けた世阿弥の、まさに碑文といえる内容をもっています。先に挙げた著作の内容も、分かりやすく、それでいて内容はそのまま、作中の効果的な部分において使われていることがまた、上手いなと感じます。

 印象的なのが、時流に翻弄されながらも一貫して能を追求し続ける世阿弥の姿です。美しい面だけではなく、稚児というものの闇の面も描きながら、それもまた能を追求するための手段としてしまう世阿弥。音阿弥に対しても、息子の敵として恨む心はありながらも、後継者として息子たちよりも適任であることを認め、後事を託していく姿。

 特に最後。世阿弥の死のシーン。世阿弥の死は、「能」が世阿弥という個人から解放されて約600年の後の現在まで、そしてこれからも伝わっていく礎となったことがここには描かれています。

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By recluse VINE™ メンバー
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室町時代は大変な時代ですね。政治の場での権力闘争が直接に芸術活動の浮き沈みに影響を与えてしまうのですから。またその政治がなかなか安定しないのですわ。もっとも歴史小説の常で、どこまでが史実で、どこからが虚構かがわからないのがこの作品の肝ですが。観阿弥、世阿弥の一生なんてまさにその変転の中での活動のいい例です。またそれは、芸「能」が生きていくためには、政治やパトロンとの様々な(肉体的なものまで含めて)接点を持たざるを得ないという現在の芸能界ともつながるテーマなのでしょう。この俗の中でどのようにして俗を永遠に残る「芸」へ昇華させていくのか、ここには世阿弥の考え方とその生き様が見事に描かれていきます。様々な登場人物と歴史的な権力者が室町の時代の中で描かれるためでしょうか、世阿弥のユニークな存在が浮き彫りにされます。ただ余りにも世阿弥の孤高さが意識的に強調されてしまうようですが。一方で、能役者を権力者との関係の中で対等な立場で、描こうとしたためでしょうか、この芸能のもつ特殊な存在性は背後に退いてしまいます。
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7 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
以前、佐伯晶の『秘曲』という小説を読んだことがあり、クライマックスの凄まじい感動と、そこに至るまでのシンドサとが記憶に残っている。佐伯晶という作家は多分男性と思われるが、女性から見た世阿弥の小説は本書と瀬戸内寂聴『秘花』が双璧であり、この三作を読み比べてみるのも一興と言える。
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