20世紀初期の蘇州を舞台に、傾いた旧家の美しい女性二人の繋がりに
滅びゆくものの美学を託して描いた作品です。
ストーリーや演出の諸所に「覇王別姫」や「花の影」、
あるいは「紅夢」、「ルージュ」といった第五世代や
スタンリー・クワン作品へのオマージュが濃厚で、
それらの作品が好きな人にはお勧め出来る作品です。
また、この作品は、男性間の同性愛をしばしば描いて話題を読んだ先行作品において
言及されなかった女性同士の恋愛を主要な題材に取り上げており、
それが独自性と言えます。
更に、人物の視点から木漏れ日を見上げて捉えたショットなど
カメラワークの点でも先行作品に見られない新奇さを感じました。
カメラを人物の目線と一致させる手法がこの作品ではかなり意識的に多用されています。
配役では、宮沢りえが旧家に落籍され若くして未亡人となった元歌姫翠花(ジェイド)
そして王祖賢(ジョイ・ウォン)が翠花を愛する義妹で男装の麗人、
女学校で教師の職を持つ革新的な女性蘭(ラン)を演じています。
バブル期にそれぞれ日中を席巻した、
いわば「一昔前の美女」二人の組み合わせからも明白な様に、
両者の美は崩壊する一歩手前の、デカダンの美です。
カメラが捉える彼女らの表情にも、
華やかな美しさを十分に残しつつも、疲れや陰りの気配が刻まれています。
そうした推移を単なる老化や劣化としか思えない人には
この作品は楽しめないと断言出来ます。
逆にこうした変化を客観的には衰微として悲しく思いつつ、
そこに彼女らの芳紀には無かった哀愁の美を幾ばくかでも感じ取れれば、
作品世界に入り込めるはずです。
撮影当時はまだ新進の俳優だった呉彦祖(ダニエル・ウー)が
女性同士のプラトニックラブで男性役を請け負う立場に充足していた蘭を
肉体的な異性愛で揺さぶる美青年役で登場し、
彼の精悍で端正な風貌と肉体が
女性二人の息詰まるような退廃の美で停滞していたドラマのカンフル剤になっています。