高田屋嘉兵衛の人物については五巻までで十分理解できていたつもりでした。
ところが、彼は凄すぎる人でした。
ロシア側の捕虜になってからも、国を代表して交渉する役目を自分に課して
いくのでした。
気になった言葉です。
◆「わしはこの船の船頭だ。」と、すわりなおしてから、しずかに言った。
(略)言葉こそわからなかったが、ロシア人たちもその態度を見て、
―やはり、この男が船長だったのだ。と思ったらしい。
◆人間というものは、特別の例をのぞいて、その属する社会に住みたがる。
◆最悪の状況下でみずから私的に外交を買って出ようという、
いわば自分自身の存在、立場、運命をみずから転換させたことは、異常な
ほどに聡明で、何よりもはちきれるような陽気な精神といってよい。
◆嘉兵衛にすれば、この運命について、恨んだり、ひがんだりすることから
自分を解放し、むしろ陽気にうけ容れたいと思っている。
◆日本だけが鎖国していても、結局は押入れに頭を突っ込んで、
尻だけを世界中に曝しているようなものではないか。
◆―国家も、商売である。
◆―身分のある人というのは、いつも農民に対して白ばっくれているか、
それともうそをついているか、どちらかだ。
◆ただ二人の間に成立した信頼だけが、両国を戦争から救った事になる。
◆―わしの人間をみろ。透きとおっているだろう。
◆(みな、国内をみているだけなのだ。)と思った。
ロシアにすげなくすることが、日本の勇ましさであると彼らは思っている。
◆人間は、物理的に押しこめられて孤立した場合、
飢えや渇きと同じレベルで自分の状況についてささいなことでも知りたく
なる。
日常のムラを追い出され海の上で暮らすようになった加平衛が、
ロシアと日本との間にはいり交渉の橋渡し役を果たしました。
日本のムラ社会は今も根強く存在しています。
自分が果たすべき役割をしっかりと見つめるための書となりました。