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16 人中、15人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
司馬文学の最高峰,
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レビュー対象商品: 菜の花の沖 1 (単行本)
高田屋嘉兵衛は江戸時代の船商人。本作は嘉兵衛の少年時代から引退後の生活まで、ほとんど一生を描いた伝記。司馬作品が昭和期の反省から、ややもすると明治維新前後の人間を美化して描く傾向があるのに対し、本作は江戸時代の大人を素直に描いていて好感が持てる。題名は引退した嘉兵衛が住む淡路島の丘から見る沖の事。作者は、成功した船商人のサクセス・ストーリーを描こうとしたものではなく、江戸時代に何故このような自由闊達で悠揚迫らぬ精神を持った人間が存在したのかという秘密に迫ろうとしたものと思われる。それが顕著になるのは、嘉兵衛がロシアの軍船に捕まってシベリアの地に抑留されてからである。この当時、ロシアの軍船が日本に接近し、しばしば問題を起こしていた。ここで嘉兵衛は、卑屈になったり、媚びたりせず、相手と堂々と渡り合うのである。ロシアの少年にロシア語を学んだりもする。また、自分が橋渡しをすれば相手にこういうメリットがあるという提案もしたりする。 窮地に陥った時、こうした信念が強くかつ自由な精神、悠揚迫らぬ態度を見せる人物を作者はある種の理想の人間像と考えているのだろう。読後感が爽やかな司馬文学の最高峰。
14 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
久しぶりに読み直しても面白い,
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レビュー対象商品: 菜の花の沖〈1〉 (文春文庫) (文庫)
司馬氏の長編はほぼ読み尽くしましたが,あえて一冊をあげよ,と問われれば,この「菜の花の沖」をえらびます。作品の発表から相当な年月が経過していますが,内容はけっして古びていないと思います。 社会の広域化(今風に言えば「グローバル化」)に伴う「人」と「もの」の交通・流通の活性化がその時代に所属する人間の精神に与える影響がテーマなのです。 江戸時代は,鎖国政策という制約下のもとではありますが,内国的な広域化の進んだ時代でもある上,物語の終盤では,互いに未知の文明といっていい,日本とロシアが激しく衝突します。 そのような時代が生み出したひとつの典型としての「高田屋嘉兵衛」という快男児の一代記です。 司馬氏の長編では,まず人物を描くのではなく,人物の属する「時代」そのものを描き,その時代の大きな流れの中で登場人物たちがいかにふるまったのかを描く,といった手法がとられることが多いようですが,本編では,日本・ロシア双方の史料から主人公である嘉兵衛の言動・行動が立体的に明らかにされていくのであり,その展開がなかなか面白いです。 氏の他の作品のような合戦シーンもチャンバラシーンもほとんどなく,むしろ日本とロシアが戦端を開くのを,必死の外交交渉で回避するストーリーです。 アメリカの中東政策に関連して,一時「報復の連鎖」という言葉が流行りましたが,嘉兵衛は政治になんの責任を持たない町人の身分ながら,ほとんど徒手空拳でこの連鎖を断ち切ることに成功しています(まさに快男児です)。 文庫本第5巻の「ロシア史」はたしかに冗長ではありますが,「文明の衝突」を描く上で,ロシア史をまったく描かないのも片手落ちともいえるので,個人的には許容できると考えています。
6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0
冗長だが特徴のある時代小説,
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レビュー対象商品: 菜の花の沖 1 (単行本)
18世紀後半、函館を拠点に活躍した商人、高田屋嘉兵衛の生涯を描く。「函館の恩人」とも呼ばれ、函館山の麓に銅像の建つ人物である。 嘉兵衛と言えば、なんと言っても辰悦丸を駆って日本海をゆく 商人としての投機的な姿勢と、さらにクナシリからエトロフへ至る北方航路の開拓という 冒険的な精神が思い浮かぶ。 そして、それが仇となったようなロシア艦による拿捕と人質交換事件。 毅然とした人格に、ロシア側の資料にも驚きをもって記録される。 ある意味18世紀後半の日本を象徴する人物と言え、彼の生涯を通じて、 西廻り航路による全国規模の商品流通と、封建主義・農本主義との芽生えつつある矛盾や、 風雲急を告げる北方情勢などが詳しく描かれ、特色ある時代小説として興味深く読んだ。 ただ、中盤から延々と続くロシア論は、本編の進行を逸脱して冗長という感じも受けた。 また(司馬氏の作品にはありがちなことだが)主人公・嘉兵衛を英雄視し過ぎるような点も少々気にはなる。 このような点で文庫全6巻はやや間延びした感も受けるが、 幕末に連続してゆく封建主義や鎖国主義崩壊の萌芽を読み取ることができるのは確か。 この作品のあと「竜馬がゆく」「翔ぶが如く」「坂の上の雲」など、氏の幕末から明治の世を描いた 作品を読むと、時代の連続性を確認でき、一層面白く読めるだろう。 (全巻通読の印象です)
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