著者の米国人ルース・ベネディクト女史 (1887年−1948年) は、戦時情報局から
委嘱され日本人論・日本文化論である本書「菊と刀」を執筆しました。彼女は
日本に住んだことも訪問をしたこともありません。当時の情勢からは無理からぬ
事でした。
文化の形成に決定的な影響を与える自然環境、地勢、気候・風土のみならず、
特に日本人の「湿気」を体感せずして、果たして文献や調査だけで研究が可能な
ものかと疑問視していました。しかし、読み進むにつれて、さすがに著名な文化
人類学者だけあって、その卓越した洞察力や分析力には驚嘆させられます。よくぞ
これほどまでにと唸ります。「恩」の概念を「忠犬ハチ公」の挿話をもって説明した
ところなどは分かり易い。
出版された1946年当時から比べると、現在の日本人の意識や価値観は全く変
わってしまい、今の視点で捉えるとおやっと思わせる点も散見されます。しかし、
全章を通じ文化論としての価値は極めて高く、彼女が定義した「恥の文化」は
今尚、根底にあり現代においても日本を理解する上に大いに役立つ名著です。