菅江真澄は主に東北から蝦夷地を漂泊した旅人。
その旅の記録は詳細を極め、現代でも得がたい民俗資料となっている。
この本は真澄が生涯戻ることのない旅へ出立して間もない時期の物。
彼の残した記録はほとんどが東北から蝦夷地にかけてのものだが、
この巻には信濃から越後へかけての足跡が残されており貴重。
・伊那の中路
・わがこころ
・くめじの橋
・秋田のかりね
・小野のふるさと
・外ヶ浜風
・けふのせば布
の七編のうち、上三編が越後までの記録。
天竜川の急流に肝を冷やしたり、姥捨山で月を愛でたり、深山のくめじの橋を訪れた後
戸隠を越えて越後へ入ったりと、多彩である。
真澄は一生を通じて旅先の心細さと絶えない望郷の念にかられつつ、
逆に行く先々の人々との暖かい交流に支えられて来た人であるが、
その悩ましい旅人の姿は早くもここで見られる。
真澄は謎の多い人物と言われる。
故郷を捨てて生涯を漂泊に過ごした、その最初の一歩を踏み出す決意はどのようなものだったろうか。
その真澄の心境に触れるにはやはりこの一巻が面白い。
全編現代語訳、注釈つき。
さらに著者の内田武志氏と宮本常一氏が、最初に真澄という人について解説してくれる。
年表まで掲載されているので、菅江真澄ついて知りたい人にとっては特に推薦できる一冊である。