『おれの中の殺し屋』、あるいは『内なる殺人者』の番外編的な作品です。
主人公は『おれの中の殺し屋』の主人公、
"おれ"ことルー・フォードの仕切る町にやってきた流れ者のバグズという男。
この男がルー・フォードの紹介で地元の大きなホテルに仕事をもらったところから話は始まります。
『おれの中の殺し屋』に出てきたルー・フォードの恋人のエミリーが登場したり、
『おれの中の殺し屋』を読まれた方(それで一応、おもしろいと思った方)
にはかなり楽しめる内容かと思います。
主人公がエミリーと恋人関係になったり、誤って犯罪を犯してしまったりする一方で、
いつも要所要所に出てきてははめた皮手袋で人を殴りまくったりして
ヘラヘラしているルー・フォードがまあ不気味です・・。
しかしストーリー的には真っ当な推理モノ(解説にはプロット重視と書いています)で、
トンプスン作品の中でもかなり映像が頭に浮かびやすい内容になっています。
また解説ではルー・フォードの住む町やエミリーの姓など、細部にまつわる設定が
こまごまと違っているようなことが書かれていましたが、
読んでいる限りは特にそれがひっかかることもなく、『おれの中の殺し屋』の1つの前日譚、
前日譚とはいえ『おれの中の殺し屋』を読まないことにはいまいち内容の把握できないそれとして
とても楽しむことができました。
プロットがしっかりしているので、トンプスン作品の尻切れトンボな雰囲気が
いやな方も楽しめると思います。飛ぶ血の量も非常にひかえめな作品です。