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荒地の恋 (文春文庫)
 
 

荒地の恋 (文春文庫) [文庫]

ねじめ 正一
5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

五十三歳の男が親友の妻と恋に落ちた時、彼らの地獄は始まった。詩神と酒神に愛された男・田村隆一。感受性の強いその妻・明子。そして、北村太郎は明子に出会って家庭も職場も捨て、「言葉」を得る―。宿命で結ばれた「荒地派」の詩人たちの軌跡を直木賞作家が描く傑作長篇小説。第三回中央公論文芸賞受賞。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ねじめ 正一
昭和23(1948)年、東京都杉並区に生れる。青山学院大学中退。民芸店経営のかたわら詩を書く。56年、処女詩集「ふ」でH氏賞受賞。その後、性的語彙を氾濫させた詩集「脳膜メンマ」、朗読のパフォーマンス等で言葉の臨床実験を行ない、現代詩にあらたな世界をもたらす。平成元年、自らの少年期を題材にした小説「高円寺純情商店街」で第101回直木賞、20年、「荒地の恋」で第3回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 文庫: 391ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2010/7/9)
  • ISBN-10: 4167559048
  • ISBN-13: 978-4167559045
  • 発売日: 2010/7/9
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (13件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 4.0 詩人でありつづけることの栄光と悲惨, 2007/11/28
By 
レビュー対象商品: 荒地の恋 (単行本)
昔、NHK教育の若者向け番組のなかで、田村隆一がインタビュアーの齋藤とも子(女優、のちに芦屋小雁と結婚するが離婚)に、「あなたたちのようなマクドナルドのハンバーガーがあたりまえになった世代は感受性が違ってくる」というようなことを言っていた。今にして思えば慧眼である。『荒地』の詩人たちのなかで、70年代の消費社会化という日本社会の構造的変化にきちんと対応していたのは、田村だったと思う(それと、吉本隆明も)。その対応は、「詩人」というキャラクターを貫くことでなされた。この時代、現代詩にくわしくない読者でも「詩人」として知っているのは、谷川俊太郎と田村隆一だった。

北村太郎が、絵に描いたような平穏な家庭を破壊する道を選んだのは、恋愛だけではなく、このような田村の立ち位置に対する嫉妬やライバル意識のようなものがあったのではないだろうか。戦後詩の歴史のなかにビッグネームのひとりとして記録されるのではなく、現役の詩人として生きる道を北村は選んだが、それはあまりに凄惨な代償をともなっていた。不倫のようなゴシップとしてではなく、詩人でありつづけようとした人物の栄光と悲惨の物語として、この小説は読まれるべきだと思う。

私は、一度だけ北村太郎を見たことがある。76年頃だったか、鮎川信夫の著作集が完結した記念の催しが開かれ、司会の三好豊一郎や講演者の吉本隆明らとともに出席していた。おそらく、小説に描かれた難しい恋愛関係がはじまった頃だ。小柄で、高いスツールに座って脚をぶらつかせていた北村の姿は、猫を思わせた。この本の表紙に描かれた猫の絵は、その時の北村のイメージによく似ている。この催しに田村隆一は出席していなかった。
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 「ことば」の因縁, 2008/10/28
By 
biscuit - レビューをすべて見る
(トップ1000レビュアー)   
レビュー対象商品: 荒地の恋 (単行本)
詩誌「荒地」の詩人北村太郎と、田村隆一。
北村が田村の妻、明子と道ならぬ恋に落ちるところから、物語がはじまる。
長い年月をかけ、「ことば」で結びついた北村と田村の関係は、女性問題ひとつですぱっと切れるようなものじゃない。

この小説を読みながら、田村隆一「詩人のノート (講談社文芸文庫)」をめくってみたら、田村は北村について、こんなふうに書いていた。
「北村太郎とは因縁が深い。きわめて深い。このぶんでは、来世までつづきそうである」。

明子も巻き込んで三つ巴に絡み合い、本人たちもほどく術を知らないその複雑な関係。というより、北村と田村は、ほどく必要も感じていなかったのかもしれない。
ふたりの間で、ゆっくりと壊れてゆく明子の精神。
北村の最後の恋人。そして、驚きの結末。
最後まで息つく間もなく一気に読ませる。ねじめさんは、すごい。
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3 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 終わり方が鮮烈, 2010/1/9
レビュー対象商品: 荒地の恋 (単行本)
実名小説ということで雑誌のゴシップ記事に対するのと同じような興味があったのだが、薫りたかい作品に出合えてよかった。
本の紹介に「親友の妻と恋に落ちた時、彼らの地獄は始まった」というとおり話は北村太郎と田村隆一の妻明子との関係を中心に進んでゆく。
しかし僕には「恋に落ちた」こと自体が感覚として納得できない。もちろん五十になっても六十のなっても心には瑞々しいところがあるから異性を惹かれたり好きになったりすることはあるだろうが、その様な心の動きを否定はしないまでも統制はするというのが妻子がいるという状況を作った人間としての責任だろうと思う。というように考えるのが僕のような散文的な人間であって詩人は「恋に落ちる」のかも知れない。
僕にとっては、明子との関係より阿子との関係のほうが生々しく実感できる。性的な描写があるから生々しい実感があるのではなく、多発性骨髄腫という有効な治療法のない病をえた六十すぎの男の心の在り様がわかる。もちろん、阿子と知り合った時点では病気は存在していなかったが、阿子に傾斜してゆく心の動きのほうが明子と「恋に落ちる」よりずっと共感できる。
時が流れ六九歳で死去。
結末に阿子の視点で語られる部分があるのがいい。
最後の4行が鮮烈。
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