画家による詩情豊かな美術エッセイ。
好きな画家の軽いスケッチから本格的な評論まで、深い思索から発せられた含蓄に富んだポルトレである。
著者の筆はファシアノスの現代アートから澁澤龍彦や浅井慎平との華麗な交遊録、はてはアジアや南米フォークアートにまで及ぶ。
あたたかな語り口が織りなす本書は、まさに手仕事による無二の複雑な織物を思わせる。
なかでもアントワネット・シュウォブを論じた「クッキーからアートへ」や、ベン・シャーンの「素描の詩人、手の画家」、眼は未開のまま開いていると考える著者の「私のデッサン」には心打たれた。
加納光於や田島征三などの作品がカラー図版入りで見られるのもうれしい。