この物語は主人公であるフェンによって世界各国が救われる
と言うご都合主義の英雄譚である。
戦争と人間をテーマに据えているにも拘らず、
名前のあるキャラクターは唯の1人として病以外の理由ではまず死なない。
暴逆を尽くした悪王であっても個人の願望の為に国政を捻じ曲げた司教であっても
彼らの行為は報いられる事が無い。
そして全ての登場人物はフェンと言う一人の少女と
その仲間達の英雄性を際立たせる為にのみ存在している。
それ以外の存在意義は一切無い。皆無にして絶無である。
彼らはフェンと言う少女がその場その場の感情に流され
突発的に起こした短絡的な行為を正当化させる為に配置されている。
フェンの行動は全てが見えざる神の手に支えられ、
彼女の文字通りの我侭は、必然性の無いあらゆる偶然が追い風となり
国家のみならず個人をも救う善業となる事が確定している。
勿論彼女のお陰で戦争も終わる。
では果たして、彼女が止めるまでの間に失われた名も無い兵士達は
何の為に死んだのか。その答えを出す者は誰も居ない。投げっ放しである。
この作家と戦史とは相性が致命的に悪いと判断せざるを得ない。
何故ただの旅行記にしなかったのか。そこだけが不思議でならない。