舞台設定がとても素敵だった。十二邦を統べるレイン。魔術を教える空の学院。宮殿の地下にある莫大な蔵書を誇る王立図書館。その図書館では孤児達が集められ司書になるべく教育を受け、学者が持ち込んだものや遠方の地から送られた書物を解読していた。
孤児のネペンテスは、空の学院から持ち込まれた、たいして価値もなさそうな茨文字の書物になぜか魅せられ、秘匿し解読していく。
その本は世界を征服した古代の王アクシスと、彼を支えた魔術師ケインの物語だった。そこでは男性だと知られていたケインは、女性であった。ケインの視点から、アクシスの世界征服の歴史が茨文字で語られていく。
しかし、解読するうちにネペンテスは次第に茨文字の魔法に囚われてしまう。
また、かたや宮殿では王が崩御し年若い王女テッサラが即位したばかりだった。十二邦では反乱の気配も感じられ、それ以外にも不穏な空気がただよっている。
テッサラには王という立場が重くのしかかり、ふわふわと森の中をさまよっている。その様は国の状態そのものだ。
一見、何も繋がりもないようだったが、三人の女性達の行動が最後に収束していくさまは圧巻だった。この作品でも女性陣がすばらしく魅力的である。特にケインの決断には感嘆した。
また、空の学院の生徒ボーンの活躍も見逃せない。反乱を画策する一族と王国との間に挟まれる中で、自分の魔術と向き合う。ネペンテスとの恋も素敵だ。
そのほかにも、ネペンテスの同僚のレイドリー、テッサラを助ける魔術師ヴィヴェイ、レインの初代の王マーミオンなど魅力的な人物が登場する。
翻訳されているマキリップの作品のなかでは、この作品が一番壮大な物語かもしれない。