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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
注目するべき作家かも,
By ホレイシア (東京都国分寺市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 茗荷谷の猫 (単行本(ソフトカバー))
何の予備知識もなしに、ただ題名と装丁が気に入って手にとったが、なかなかの拾い物であった。他の作品も読んでみようと思わせる力がある。江戸時代の染井吉野の話から始まり、少しずつ時代を追っていく短編集。特に気負った文章でもなく、そういった面では、よほどうるさい方でない限り心配は要らないと思う。舞台はすべて東京で、地理がわかる分、楽しんだかもしれないが、別に知らなくても支障はない。 ただ、明治、大正、昭和初期の基礎知識があった方が楽しめることは確かだ。個人的には、内田百間の登場が嬉しかった。特に扱われている作品が「冥途」とくればポイントは大きい。 星を一つ減らしたのは、「人間ていうのは時代を経てもあまり変わらないんだよね」というメッセージ性がちょっと強過ぎるかなと思ったから。本の世界でぐらい現実を忘れてもいいのではないか。
24 人中、19人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ままならぬこと、それが人生さ,
By Roko (東京都江東区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 茗荷谷の猫 (単行本(ソフトカバー))
どの物語に登場する人も不思議なこだわりを持っていました。桜に命をかけた人も、映画監督になるのが夢だった人も、他のことなどには目もくれず、自分の理想に近づこうと必死でした。そんな中で異彩を放っていたのが「隠れる」の耕吉さんです。意味のあることはしないようにしよう。誰とも仲良くしないでいこうと努力し続けるのがあんなにむずかしいとは。 人生とはままならぬことの連続です。みんなと仲良くしていきたいと思う人には友達ができず、放っておいてくれと思っている人には、うるさく付きまとう人がいたりするのです。努力したからそれが報われるとは限らないし、ぼうっとしていても上手くいってしまうこともあります。 信じていた人に裏切られ、あてにしていなかった人に助けられ、気にして欲しい人には無視され、どうでもいい人に好かれてしまい、ああ、どうすればいいのでしょう! 9つの物語は関係なさそうな顔をして、でも、そうっとつながっています。この世に生きている限り、みんなどこかでつながっているということなのでしょう。 どの物語を読んでも、その時代に生きていたわけでもないのに、なんだか懐かしさを感じてしまうのが不思議でした。 どこか知らないところで、わたしもつながっているということなのでしょうか。
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
見えない糸が紡がれてゆくように。,
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レビュー対象商品: 茗荷谷の猫 (単行本(ソフトカバー))
九つの話からなる連作短編集。時は幕末から昭和、東京オリンピック目前の頃まで、およそ百年の流れ。 場所は巣鴨染井、品川、茗荷谷、など九つの東京の町。 ひとつひとつの章に町の名が添えられている。 人は名もなき市井の男女が主人公を務めている。 なんとも不思議な味わいの話ばかりだ。 時も場所も人もそれぞれ異なる話ながら、その三者が実は紗を掛けたように 透けて繋がりあい、読む者にも時間の重なりや人の関わりがしっとり馴染み、 前の話が後になって急に鮮やかに立ち帰ってくるような感じだ。 どの話も普通の人々を描きながら、知らぬ間に現実を突き抜けた世界が ふうわりと広がっている。夢と現の入り乱れるさまがある時は凄味を帯び、 ある時は滑稽さを伴って迫ってくる。 淡々とした語りで繰り広げられる市井の人の話は、諦念や鬱屈や焦燥感、 現実との乖離、無力感なども掬いとり、あたら幻想が先走ることなく ひっそりと落ちついた佇まいだ。 本のタイトルにもなっている「茗荷谷の猫」のラストの衝撃、「庄助さん」の とぼけた味わいと、「ぽけっとの、深く」で明かされる彼のその後に息を呑んだ。 「てのひら」は、ほろりとさせられた。 静かな物語のどれにも人が生きた証があった。 ちょくちょく登場したひとりのご老人は、本当はどういう人だったのだろう。 そんなことを気にしながら本を閉じた。
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