本書は、二・二六事件に絡んだ1.英霊の声、2.憂国、3.十日の菊(戯曲)と4.二・二六事件と私、で構成されています。
1.二・二六事件で処刑になった将校と第2次大戦の死した特攻隊の神格(霊)が、神道の儀式で人に宿り、天皇の在り方に関連してその無念をぶちまける「英霊の声」
2.新婚故、二・二六事件を起した仲間から決起に声をかけられず、逆に彼らの討伐を命じられることに憂い、生と性の絶頂で心から信頼できる美しい妻とともに自刃する「憂国」
3.二・二六事件で命を狙われた時にその人生の最高点を迎えた大臣の2度と最高点を味わえない喪失感を引きずった生きる屍と化した隠居生活とその再起をかける醜さ、そして、彼を守るために息子を失った家政婦のその業による変わらぬ気性が描かれた「十日の菊」
どれも非常に読み応えがありますが、本書で最も重要なのは4.各作品の三島による解説も含んだ「二・二六事件と私」だと思います。三島はその中で以下のように述べています。
「私の癒しがたい観念の中では、老年は永遠に醜く、青年は永遠に美しい。老年の知恵は永遠に迷蒙であり、青年の行動は永遠に透徹している。だから、いきていればいるほど悪くなるのであり、人生はつまり真逆様の頽落である。」
その氏の観念は「憂国」、豊饒の海の第2部「奔馬」へと繋がり、やがて国体のあり方を世間に知らしめる等の思いも交わり、彼自身の自刃に繋がったのだろう想像でき、そういった氏の観念・思想等が知れるという意味でも非常に価値のある本だと思います。