「壊れてしまった大切なもの」を取り戻すために、小学5年生の子供が異世界へ旅立つ。
これって『ブレイブ・ストーリー』そのままなんじゃ…と戸惑いを覚えつつ、読み始めました。
「物語」や「英雄」についての設定が、ふだん私たちが抱いている概念を覆すもので、斬新なだけに理解するのに骨が折れました。読み終えた今もまだ消化不良です。
上巻は設定の説明にほとんどを使っており、小5の主人公に理解させるためと、読者を物語の中にいざなうためには必要だったのかもしれませんが、それでも丁寧すぎる描写が何箇所もあり、もう少しコンパクトにまとめて、その分、大切なラストの部分にページを割いてほしかったです。
私も、他のレビュアーの方と同様、主人公の友理子がとてつもなく語彙や知識が豊富で発想や洞察力が大人と同等で、小5というのはあまりにも無理があると思いました。
また、宮部みゆきはファンタジーには向いていないのではないかという気が、作品を読むたびにします。あやかしの出てくる時代ものには違和感を感じず、すんなり入り込めるのに、ファンタジーになると、卓越した文章力で描写されているにも関わらず、リアリティがないと感じたり、ご都合主義であると感じてしまうのです。
たとえば、魔法で両親を眠らせておいたり、体が凍えないよう部屋を暖房しておくだとか、空腹や疲労を感じない法衣だとか…。随分と便利だなあ、手回しがいいなあと冷静に考えてしまって、物語の世界に入り込めません。
怪物との戦いや、呪文を唱えたり、錫杖が輝きを帯びるシーンなども、どこかで見たようなシーンだなあと思えてしまい、なんだか嘘くさくて、読んでいて気恥ずかしさすら覚えてしまいます。既成のゲームや映画の描写をなぞっているだけのようなありきたりな描写だからでしょうか。
あまり乗れないまま、それでも作者の優れたストーリーテリングの力で最後まで読みましたが、陰湿ないじめや殺人や戦争などの現代社会が抱える病理もまた、人間の紡ぎだす「物語」なんだというくだりで、これは冒険もののファンタジーの形を借りた、メッセージ性の強い作品なんだと思い、ようやくすとんと胸に落ちてきた気がしました。
ですが、あまりにむごい償いの方法(これは、どんなに情状酌量の余地があっても、犯した罪は重いということを言いたかったのかもしれませんが)や事件の中途半端なカタのつけ方や、続編を書く気満々な終わり方には、どうにもすっきりしないものが残り、カタルシスを得られませんでした。