ナチス・ドイツと講和したイギリスを舞台にした歴史改変三部作の第一作目。
二次大戦を契機にした歴史改変もので、ユダヤ人問題と聞くと
ユダヤ警官同盟が思い浮かぶけど、あちらよりも普通のミステリ寄り(に見える)。
戦争を終わらせた最大の権力者たちとその屋敷という定番の設定で、権力者一族でありながらユダヤ人と結婚した女性と敏腕警部補の狭い視点で交互に語られるため、改変ものの醍醐味である現実とのギャップはあまり楽しめない。
しばらく読んでいて、これは単に改変世界を舞台にしただけのミステリなのかと思いきや、後半から個人の奮闘などどうにもならない、真実も法律もねじ曲げる強大な権力が見え始め、ドイツとの和平は前座に過ぎない、さらにグロテスクな改変を、主人公同様に実感することになる。
最もわかりやすい改変の『一九七四』は、イギリスにとっての終戦が早まったことによって、こちらも10年早くなったのかもしれないが、それより何年も早くビッグ・ブラザーの支配が始まることを暗示する重苦しい結末。
ナチスはまだソ連と戦争を続け、おそらく、日本も軍国主義を維持したまま歴史が進んでいるように見える。イギリスだけでなく、世界はどう変貌していってしまうのか、光明は差すのか、それとも暗黒の未来が待っているのか。