発音だけでなくアクセントにまで言及した力作だが,以下のような問題が…。
1.発音の本なのに,発音記号のミスプリが目立つ(2012年4月購入で,届いたのは2010年10月18日第2刷)。著者の問題なのか出版社の問題なのかわからないが,パラパラとページをめくって次々に見つかるのはちょっと問題(まえがきに,辞書を手許において頻繁にチェックしろと書いてあるのは,本書の発音記号にミスプリが多いことを暗示している?)。
2.まえがきでIPAを覚えようと書いておきながら,本書の発音記号はジョーンズ式。IPAを薦めるなら,本書もIPAで書くべきだったのでは?
3.通常の辞書と異なる発音も目立つ。たとえば,victory, lovelyのyは普通の辞書なら短母音だが,本書では長母音(でもemergencyのyは短母音になっている)。victoryやlovelyのyは日本語の短母音イよりは長めだから長母音にしたのかもしれないが,sheetやleaveの母音よりは短いので,これらと一緒にしてしまうのはよくないと思う。
4.本書はアメリカ発音を扱っていて,コラムでも「waterはウォーターではなくワーター」などと書いてあるが,waterのアメリカ発音は普通ワタ,ウォータの両方が辞書に載っているので,コラムの主張は客観性に欠ける。waterのように,普通の辞書でアメリカ発音が2種類示される単語で1種類の発音しか示していないのは,学習者の便を考えたというより,筆者が覚えた方の発音を示したということなのだろうが,思い切りが良すぎ。orangeなどで本の発音記号とCDの読み方が異なるという珍現象が起きているので,迷ってしまう読者もいるのでは?
5.綴りと発音の関係に踏み込んでいるものの,auが不規則だと言ってみたり(awと同様オーと伸ばすのが基本で,auntやlaughが例外),oaは例外なくオウだと言ってみたり(abroad, broadという例外あり),ooがウ,ウーに分かれると言ってみたり(blood, floodはこのどちらでもない),ちょっと詰めが甘い。
ということで,一個人の体験談としてはなかなか面白く読めるものの,英語の学習者,特に受験生にはあまりお奨めできない印象。
4/29に追記:上記は届いてパラパラと眺めて,CDも流し聞きして,それでも目に付いた問題点を指摘したのだが,じっくり眺めるとミスプリの量が夥しい(値段が安いのは校正をしていないから?)。CDもちゃんと聞くか,と最初のtrack1から再生すると,carrierの発音記号からしておかしい。carrierの第1アクセントのある母音は,appleの母音と同じはずだが,本書ではthereの母音と同じことになっている(しかし,というか当然というかCDでは普通の辞書に示された発音で読まれている)。筆者が覚えた発音だとこうなのかもしれないが,受験生がこの本の発音をそのまま覚えると試験で間違えること必至(なので,評価を星1つに変更)。実際のネイティブの発音を聞くと,必ずしも辞書に示された発音通りではないこともあるので,本書のような発音もあるのだろうとは思うし,だからこそ,面白いと思える部分もあるのだが,初学者向きでないことだけは確か。