日本には、膨大な数の英語教材が溢れている。本書は、その中で比較的評判を呼んだものを中心に約40冊をとりあげて分析している。あくまでも、英語学習に役立てる何かをそこから引き出すことが目的だが、時代別に並んでいるので、見方によっては、日本人の英語格闘史を市販教材の側面からみる、という文化史的な視点で読んでも面白く読めるところがある。
重要なのは、最後の第8章。いろんな教材を分析した上で、最大公約数的にみればこういう学習法がBestではないかというのを紹介している。忙しい人は最低ここだけ読めばいいだろう。「ああ、やっぱりな」という結論で、それほど新味はなかったのだけれど。
留意点としては、まず教材の分析ということに力点を置くあまり、教材を利用する一人ひとりの学習者の英語力のレベルの違いを必ずしも十分考慮した内容にはなっていないように思えることが挙げられる。英語力といっても、初級者、中級者、上級者ではかなり違うのだから、この点はもう少し検討すべきだったと思う。また、ちゃんと分析をされているけれども、これらの教材を、著者がどこまで深く自分で実際に使い込んでみたかまでは良くわからない。教材はやってみないとわからない。本屋でじっくり調べて良いと思っても、実際に使い込んでみて「あ、これ、イマイチだな」と気づくことは珍しくない。特にCDつきのものに多い。また、読み物として面白く読めて評判の高い本が、英語力の向上にも役立つかというと、かならずしもそうでもないところがあるように思う。
あと、辞書について触れられているところが無い。学習者で辞書を使わない人はいない。電子辞書という革命が起き、今や辞書が正しい発音で喋ってくれる時代になっているのだ。それから、ネットで洋書が比較的簡単に手に入る時代になっていることを考慮すると、国産の教材だけを取り上げていることもどうかと思う。例えば、Grammar In Use のシリーズは、英語がつたない非英語圏の学習者向けに大変わかりやすく作られていて、例文も安心して覚えられる自然なものばかりで、問題量も充実している。特に初級用の赤本は、説明がほとんど無いのに、絵と例文だけで文法の要点の大半が直感的にわかるようになっているので本当に凄いと思う。英語学習熱は日本だけの現象ではない。国産の教材は本屋で自分でも簡単に調べられるが、洋書はかならずしもそうではなく、英語圏にも非英語圏出身者のための教材が多くあるということを知らない人が多い。そのような教材こそ、本書のようなガイドを必要としているのではないかと思う。