「月日は百代の過客にして 行きかふ年も又旅人也。
舟の上に生涯をうかべ 馬の口とらえて老いをむかふる物は 日々旅にして 旅を栖とす。」
ご存じ日本文学史上屈指の名文の冒頭です。この『おくのほそ道』の冒頭の部分を日本文学研究者のドナルド・キーンはつぎのやうに訳しています:
The months and days are the travellers of eternity. The years that come and go
are also voyagers. Those who float away their lives on ships or who grow old
leading horses are forever journeying, and their homes are wherever their travels
take them.
英文も原文のリズムをよく映しているではないでしょうか。本書は『おくのほそ道』の完全な英語対訳です。そして「訳者序文」も英訳されています。この序文は松尾芭蕉の簡単な経歴と『おくのほそ道』の成立ちが紹介されています。さらに、巻末に「芭蕉における即興と改作」と題された小論が載っています。これは日本人読者を対象としているため英訳はありません。
古典に現れる日本語独自の表現を如何に英語に置き換えるか、ドナルド・キーンの苦労が伝わってきます。英語の勉強になると同時に、この日本古典文学の屈指の名作を外国人に説明する必要があるときなくてはならないツールでもあります。また外国人へのプレゼントとしても最適です。