バレエ・ファン、そして吉田都さんのファンの方(私もですが)には、今更言うまでもないと思いますが、ファンでない方にも是非観ていただきたい名作バレエのDVDです。(今年の春、NHKのBSでも放映されたので、ご覧になった方も多いでしょう)
フーケーの有名な原作をもとに、英国ロイヤル・バレエ団の黄金期を築いた名振付家・アシュトンが振り付けた素晴らしいバレエ作品です。ロイヤル・バレエ団のオリジナル演目として長い間愛されてきましたが(日本ではまだそれほどメジャーではありませんが)、このDVDでは主役のオンディーヌを踊る吉田都さんが、まさに「当たり役」と言える輝きを見せています。
吉田都さんと言えば、「眠りの森の美女」のオーロラ姫や「シンデレラ」の主役など、もともと「おっとりしていて可憐・可愛らしい」役柄に定評がありますよね。吉田さんご自身のお人柄が出るのだと思います。しかし、この「オンディーヌ」は「純粋・可憐」ではあっても、今までの役とはまた違う不思議な魅力を創り出しています。可憐で無垢な水の妖精が、初めて人間の男と恋に落ち、最終的には不幸な結末に終わる悲劇ですが、「あまりに無邪気すぎることの罪悪」のようなものを、吉田さんのオンディーヌからは感じました。
彼女の絶えずくるくると表情を変える顔、キラキラ輝く大きな瞳、完璧なテクニックに支えられた妖精そのもののような踊り・・・。あまりにそれらが自然なので、吉田さんが「演じて」いることを忘れそうになり、そのあまりの無邪気さが時には多くの人を傷つけてしまう事が、説得力を持って伝わってきます。
相手役のエドワード・ワトソンは、まだ「若いなー」という印象ですが、実際吉田さんよりずっと年下なのに、吉田さんがとても若くあどけなく見えるので、全く違和感がありません。自分にはちゃんと婚約者がいるのに、可愛い妖精に惹かれてしまう優柔不断な青年の心をよく表しています。また、その婚約者・ベルタも、女の嫉妬を剥きだしにしてオンディーヌに対抗する所などは本当に人間くさく、純粋すぎるオンディーヌと見事に対比されています。
人間ドラマとしても、踊りとしても実に素晴らしいバレエ作品です。吉田さんが主役のこの映像は、買って手元に置いておくだけの価値があるものだと思います。