イギリスの新聞の歴史を紹介しながら、イギリスの近現代史をたどることのできる異色の本。
新聞はまさにイギリスが創り上げて、現在の姿にしてきたことがよくわかる。
1500年頃活版印刷をワインづくりの圧縮機をヒントに(これがプレスの語原)として始めたウィリアム・キャクストン。
ヘンリー8世が1516年に始めた郵便制度が17世紀になり一般国民が利用できるようになってニュース配信が始まったペニーポスト制度。
広告と購読料を収入源とするニュース媒体が出てきたのが1600年代半ば。
報道の自由を求めてウィルクスが国王と戦ったのが1763年。
同じ頃王室や政治家など支配階級をユーモアたっぷりに表現する風刺画が大流行する。
そして蒸気力を使った輪転印刷機による大量印刷と広告掲載をしながら販売を行う新聞というビジネスモデルをはじめたタイムズの創刊が1785年。
社説の始まりやロビー記者制度の始まりもこの頃。
ニュース配信専門会社ロイターの始まりが1850年。
などなど、日本がお手本にした制度は、随分と早くから出来上がっていたのだと驚かされる。
ジャーナリズムのあり方もすでにこの時代に築き上げられていった。
同様に、テレビ放送の始まりとBBC(英国放送協会)の視聴料収入をもとに運営される公共放送という形態も日本がお手本にしたことがよくわかる。
その後のオーストラリア人実業家マードック氏によるサンやタイムズの買収と娯楽路線、相次ぐ値下げ合戦、無料ペーパーメトロの出現。そして盗聴事件の発生など、新聞業界を揺るがす大事件が続いて今に至っている。
本書は史実だけを丹念に追ったものだけに、インターネットによる情報革命については軽く触れらているのみだが、このような長い歴史観でメディアを見てみると、今や明らかに新聞という媒体の凋落が読みとれる。
それにしてもこの著者の取材力には敬服する。
中でもあのジョージ・オーウェルはもとBBCの記者本名エリック・ブレアで1984はBBC海外放送局がモデルで政府やメディアによるプロパガンダを風刺したという話は印象的である。
メディアとは何か、ジャーナリズムとはどうあるべきか、改めて大きな視点で考えさせられた。