この本は、翻訳を専門とする方々はもちろんのこと、いわゆる直訳(英和辞書の訳語のツギハギ訳?)に違和感を覚えたり、不安を感じられる(私を含めた)一般の方が読んでも、とても有益な内容が、これでもか、とばかりに解説してある、素晴らしい本だと言えます。訳文の適・不適に関する説明がなされた解説書(できれば辞書形式で)が何かないかと捜していたところ、たまたま目に付いたので、とりあえず、購入してみました。
本書を2回通読して感じたことは、いくつもありますが、なんといっても、読み物として、非常に面白い。例文の質・レベルも高く、当然のことながら、訳も流麗。さらに、「原文の順序通り訳す」(はしがきp.4)とか、「これは英語でなんというのだろうと考える習慣を身につけておく」(p.27)「英英の定義を利用して、具体的な説明を加える」(p.47)などを始めとし、どのページを開いても、何かとてもいいことが書いてある、といった感じで、和訳に詰まったときにとても重宝します。プロの迫力も随所に感じられます。立ち読みしてから購入をお考えの方に、お勧め箇所を1つだけ挙げるとすれば、pronoun(pp.184-86)の項を読んでみてはいかがでしょうか。
ただ、些細な欠点も、少しだけあるように思いました。たとえば、訳例の太字の施し方に一貫性がないような気が...。また、編者の方は「文法的」と仰られておられますが、説明があまり文法的ではないことなどが挙げられます。さらに、欲張りですが、できれば例文に出典を明示して欲しかった。(その前後も読んでみたい)が、いずれも本書の価値を損ねるものではありません。(ただ、誤植は少し多すぎます)
久々に出会えた、良心的な一冊です。