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横糸として、手の込んだ叙述ミステリが仕組まれている。キリスト教が徹底的に弾圧される以前の時代が舞台で、弾圧の隙間を抜けて布教を続けるキリシタン側と、取締まる幕府の確執を描きながら、一種のオチのようなものまでが狙い済ました感じでポイントは高い。
後半、一種の犯人探しのようなドラマを楽しみながら、江戸時代初期のキリシタンたちの苦難の日々がしのばれた。
正直なところ、信仰を持たない人間にとって、むごい刑罰に耐えてまで信心するキリシタンの心はわからない。本書では弾圧に耐える主水には、「聖霊」が降っているようだとあり、キリスト教三位一体思想のなかで一般人がもっとも理解しにくいこの「聖霊」話も、信仰のない一般人からするなら、所詮は「聖別」という名の「逆差別」にしか見えてこない。それでは神の前でも人間は平等どころか、不平等ということになるのではないのか? いやだからこそ主水は「人間」ではない、と説明したいのか? むしろ、そんな物質的概念など充当しないほうが、聖なる者たちの信心や強さを強調できたと思うのだが。
事件小説としては高得点をつけてもいいが、宗教小説としての説得力が、神学セオリーの説明と共にじゅうぶんでないように思えたので、ないものねだりで減点一点。資料としての価値を含めての佳作ではあろう。
今後作者が、エンタテインメントに行くのか、信仰物に行くのかが楽しみである。
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