10年以上にわたって考察してきた、という著者の「現代若者論」の、現時点での達成点を示す骨太の論考集。バブル崩壊後の「失われた20年」を見据え、若者をめぐる社会科学上の論考の変遷に目配りしつつ、一方で、理解しがたい若者に対する理解の手掛かりを誠実に模索している。ハーバーマスに触れた箇所など、歯が立たない難解なくだりも一部にみられはしたが、全5章のつながりは明快・順当で、全体として最後まで共感を持って読み進むことができた。
白眉は第4章の「ニート論」。04年の「ニートの発見」以降、若者の危機が社会構造上の問題ではなく、「働く意欲」「人間力」(!)を欠く彼らの「心の問題」へと矮小化されていった過程が腑に落ちる手ぶりで論証され、今どことなく宙ぶらりんなニート論争の虚実を鮮やかに摘出。デンマークの「生産学校」や、ホワイトのナラティブ・セラピィなど、斬新な話題にも丁寧な解説が加えられていて、密度の濃い叙述になっている。「みんなぼっち」という、評者などには何のことか分からない表現に「共振」する若者たちに向き合い、なぜ若者は「みんなぼっち」などという造語にうなずくのか、という問題意識を維持させている著者の度量の大きさにも、感じ入った。