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31 人中、29人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
働く若者、働けない若者へのエール,
By きよし (東京都江戸川区) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 若者が働くとき―「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず (単行本)
「働けない若者」が社会問題になっている。『ニートって言うな』という新書も出た。政府の施策は混迷している。若者労働の分野で議論と施策が錯綜しているのだ。本書は、その混乱状況に整理をつける提言として時宜にかなっている。著者は、1938年生まれ、長く労働問題で先鋭的な発言を続けながら教員生活をも続けてきた。いま、教員を退任して在野の労働研究家に転じる節目に、若者へのメッセージを贈ろうと本書を著した。自身への励ましの意味もあろう。 さらには、従来、若者労働を専門にしてこなかった経緯から、いま一番問題にしたいのがその若者労働だとして一里塚を立て、新たな戦闘を始めようとしているようだ。 本書は、1999年から有志で続けてきたという「職場の人権」研究会の成果を背景にし、未来の社会を託す若者たちに良い労働を贈りたいと、労働組合の人たちには立ち上がれと、若者たちにはしんどい労働があっても「したたかに」働き、余暇をも楽しみ、生き抜けと呼びかけ、企業経営者たちには、労働法、社会保障ルールを守れと迫る。政府の施策にも目配りがしてあり、注文もつけている。 長く労働について経営者任せの気味があった日本で、企業自体が従来の労働施策では立ち行かなくなる時期にある。『新卒ゼロ社会』という新書も出ている。大きく事態が動き始めている。経営陣自体が労働側と真摯に向き合わねばならない状況にある。本書がそうした現在に道筋をつけてくれるかと期待する。多くの人々に読まれてほしい。
30 人中、27人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ノンエリートへの優しい眼差し,
By 猫マル (京都市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 若者が働くとき―「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず (単行本)
熊沢さんの書物はどれも働く者への優しい眼差しに貫かれている。本書の中でもフリーターたちにこんな温かい言葉をかけている。「…将来の展望を喪って落ち込んだり、とりあえず刹那的な遊びやお笑いに日を過ごしたりするのも、ある意味では当然でしょう。何年も『ハンズ』としてのフリーター生活を続ける若者のまじめさに、私は、むしろある意味では敬意を覚えます」(P84)。 フリーターの存在を「困ったこと」あるいは正社員に向けてそこから「脱出させるべきもの」と描く学者が多い中で「敬意を覚える」と書く学者を私は熊沢さん以外に知らない。 全編、温厚な語り口であるが、唯一、キッパリとした口調で相手を批判した箇所がある。山田昌弘さんが『希望格差社会』の中で「正規雇用」と「非正規雇用」への分岐はグローバル経済下では「必然・宿命」と論じたことへの批判である。 山田さんがグローバル時代の「中核的労働」と「単純労働」への分岐が、雇用の二極化の原因だとするのに対し、熊沢さんは「労働の質」の分岐を労働者間の差別的な処遇へと結びつけない力を労働組合は歴史的に持って来たし又持つべきだと言う。 労働組合の力が限りなく衰弱している日本では「引かれ者の小唄」に聞こえるかもしれない。しかし、フランスの若者のCPE(初期雇用契約)を撤回させた闘争を見ると、グローバル下の雇用の二極化、不安定化は「必然」でも「宿命」でもなく、それは、若者、労働者、市民で決められることなんだ、ということに気づかされる。本書の射程の長さはここでも証明されている。
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 2.0
ディマンドサイドに対する目配りがない,
By eupcaccia (神奈川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 若者が働くとき―「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず (単行本)
企業の人事・採用担当者として本書を興味深く読んだ。本書の最大の特徴は随所に統計的な裏付けを与えつつ(ただし 一部牽強付会と思われる箇所あり)学生と直接触れ合う大学の 「教官」としての立場から得た、著者の経験的感覚的な分析を 加えているところであろう。 特に以下の指摘は「なるほど」と思えるものだ。 ・学生が「バイト」経験で目にする「正社員」の労働条件の苛烈 さから、シューカツ戦線をそもそも放棄していることがあるのでは ・学校が「就職あっせん所」としての能力を失ってきていること と、「学校文化」の規範的強制力が失われていることは同期している 現状の、「正社員」では「燃え尽き」て、「ハケン社員」では 「使い捨てられる」若者の労働環境に対する、著者の提示する処方箋 は大きく以下の二点。 1.「組合」の復権により、使用者側への抵抗力を増すことで、労働 条件を適正化させる。 2.職業教育(これが個別技能を育成させる「職能教育」を指している わけではないことは注意が必要だろう)の充実により、若者へ働くこと に対する希望・展望を与えること。 それぞれの議論は「誤っている」とまでは言い難い。(人事担当者とし ては正直にいって「○○ユニオン」系に対する胡散臭さは拭いきれない のであるが) ただし、本書に決定的にかけているのは、「燃やし尽くし」「使捨て」 ている側の、労働力のディマンドサイドたる企業に対する目配りだ。 よっぽどの悪徳企業を除いては、好きこのんで「燃やし尽くし」ている わけでも「使い捨て」ているわけではない。そう「せざるをえない」のだ。 日本企業がそれで不当に利益(=搾取)をあげているわけではないことは 近年の個々の企業の決算書をみても、日本のGDP成長率をみても明らかだ。 (※ちなみに、大企業が中心であるが、労働時間については近年、大幅に 改善傾向にある。また、モーレツ社員やら過労死やらの語源をみてみても、 苛烈な労働環境で働く正社員の姿は、何も近年に限った話ではない) 企業のHR管理がなぜ現状のようになってしまったのか、ディマンドサイド の切実さを理解しないことには、本書の提案も画に描いた餅となることは言う までもないことで、結局はお上の「法規制」頼みになってしまうことだろう。
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