以前、「アングラ機関説」のレビュー上にて、若松孝二と足立正生のそれぞれのオトシマエ的新作が完成した今、ふたりのかっての栄誉ある御用評論家であった平岡正明がそれらをどう論じるのか読んでみたいと書き込んだ事があったが、期待通り新著が出た。タイトルが「若松プロ、夜の三銃士」、若松、足立、大和屋竺に沖島勲。今話題の若松の渾身作「実録連合赤軍」を中軸に、この40年近くの間に書かれ、単行本に未掲載だった原稿を集めた平岡の本当に久しぶりの映画論集。読んでいて、そういえば平岡の映画評を“リアル・タイム”で読むのは30余年ぶりではないか、と思った。書き下ろし稿の中で、やはり図抜けて読み応えがあるのが、100ページ近くにも及ぶ「実録連赤」の長編映画評。いきなり「略称・連続射殺魔」の風景論、「赤P」の革命論の到達地点に今映画はあるとのテーゼから始まり、三池蜂起、大藪春彦「汚れた英雄」、闇市、窮民革命論、山谷暴動、志ん生「三軒長屋」、塩見孝也「過度的世界論」、金嬉老、西村寿行「鬼女哀し」、次郎長28人衆、新撰組まで展開するそのフィールドの広大無辺さに、オルガナイザーとしての自身のあの時代への関わりも語りつつ、60年安保以降のブンド、赤軍の闘争史と社会的革命史を包括するような試み、ぶんぶんと唸る相変わらずの平岡節だが、“現在”の視野に一切触れる事などしないのが、いかにも平岡らしい。