「数学者」という肩書から、一瞬難解で論文調の文章を想像してしまいましたが、実際はとても読みやすい文章でした。
アメリカ滞在中、作者が味わった孤独感や疎外感、対抗意識、仲間意識などが実に素直かつ率直に語られており、おもしろかったです。自分は「留学生」や「旅行者」という立場でしか外国滞在の経験はありませんが、共感できる部分はたくさんありました。
日本で暮らしている時はあまり意識していなくても、外国に行くと「自分が日本人である」ことを意識させられる瞬間がたくさんあります。この本の中で、作者はアメリカ社会をオーケストラ、アメリカ人をヴァイオリン、自らを琴に例えて、滞在中の心境の変化を次のように語っています。
最初の頃はオーケストラに加わることを拒み、ヴァイオリンはライバルだと思っていたが、ヴァイオリンが「素晴らしい友達」だとわかってからは自分もヴァイオリンになろうとしていた。だが、オーケストラに加わってはいても、深い部分で共鳴することはなかった。その後、琴、すなわち日本人らしく自然に振舞えるようになってからは、深い部分で共鳴できる人も出てきた。
要約するとこういう感じですが、外国滞在中、同じようなことを感じる人は少なくないのではないかと思います。自分自身、ヴァイオリンになろうとしていた時期はありましたし、そうしている日本人留学生をたくさん見てきました。言葉の面でも、英語のスラングを連発したからって
相手から尊敬されるわけではない。「琴」が「ヴァイオリン」になる必要はないのです。
これから海外に行かれる方に、是非読んでいただきたいと思います。