戦後これ程憎まれ、死して喜ばれた人がいるだろうか。その膨大な知識と余りに高い教養を誇り日本の代表的知識人と目されながら戦争否定論により筑紫氏は国賊、売国奴と激しく叩かれ、数多の筑紫批難本が出された。
本書の内容は随筆的なもので、国を憂う文面から趣味の映画まで筑紫氏らしく多岐にわたる。筑紫氏のトレードマーク(?)である憲法改正否定、軍備否定論もでるが押しつけがましさはない(私は氏の高い見識をもっと主張してもらいたかったのでややその点は物足りなく感じた)。
私が本書で一番胸に来たのは冒頭の若者へのメッセージだ。現代の日本の問題は若者ではなく大人に責任がある、だから若者は大人の非難に動じることなく頑張ってほしいとする氏の主張はひたすら若者を罵倒する現代の論としては大変珍しい(ものすごい教養人であるにも関わらず筑紫氏は若者言葉をKYを除き一切批難せず擁護している)。その調子は優しさどころか卑屈ささえ感じさせるほどである。筑紫氏を罵倒する人の大部分がネット右翼の若者であることを考えると余りにも悲しい。本書を読んでそれでも筑紫氏を罵倒するのなら、もはやネット右翼の人の心に問題があるとしか思えない。一度筑紫氏嫌いの人は本書を読んでみてはいかがか。憲法改正反対論者だからといって全人格を否定することがいかに情けないことかがわかるはずだ。それでも筑紫氏が嫌いのなら本書の次の言葉を贈るしかない。「右翼は悪党の最後の隠れ家がだ」