ニュートン力学の理論をアウへーべンし特殊相対性理論を構築したアインシュタイン(1879-1955)。従来、アインシュタインの天賦の才がこの理論の源との評する考え方が支配的であったが、本書は彼が育った家庭環境、教育環境、学問環境の影響が大であったことを主張し、その考え方にそった叙述をしている。その意味では、新しい科学史論である。
わたしは、当時の純粋数学の牙城であったゲッチンゲン大学の研究者、とくにミンコフスキー、ヒルベルトの立場とアインシュタインの考え方との相違に興味があった。
アインシュタインはもちろん充分な数学的素養をもっていたが、ヒルベルトの一般相対論の公理的提示に違和感をもち、数学的形式は物理学にとって「物理学的推論」と呼ぶものに役立つ道具にすぎないこと、基本的な物理的法則は実験的現象との緊密な比較によって達せられると考えていたという(p.33)。しかし、当時の物理学界はヒルベルト流の純粋数学の審美性、無矛盾性、完全性の虜になっていたようである(p.120)。
「第一章 アインシュタインの教育−数学と自然法則−」
「第二章 無謀な事業ーアインシュタイン商会と19世紀終わりのミュンヘンにおける電気事業」
「第三章 独立独歩の人ーアインシュタインの世界観の社会的起源」
「第四章 ヘルマン・ミンコフスキーとアインシュタインの特殊相対性理論」
「第五章 数学の支配下の物理学ー1905年のゲッティンゲン電子論ゼミナール」
「第六章 後期ヴィルヘルム期における相対論ー数学と物理学との予定調和へのアピール」
「第七章 数学、教育、そして物理的実在へのゲッティンゲン的アプローチ、1890-1914」
「第八章 相対論における物理的意味ーマクス・プランクによる『物理学年報』の編集、1906年から1918年」
「第九章 初期アインシュタインの共同的科学研究」。