相当前、イタリア制作の「ダ・ヴィンチの生涯」なるTV番組が放映されたことがあるが、その中で盛んに引用されていたのがヴァザーリの「芸術家列伝」であった。今まできちんとした翻訳がなされていなかったことがむしろ不思議なくらいである。
この本はルネサンス芸術ファンのみならず、西洋中世期の歴史に興味を持っている者にとっても実に、実に興味深い。
ここでは、フィリッポ・リッピの女好きが高じた破天荒な生き方も可笑しいが、歴史ファンとしてはベルリーニが面白い。異母兄弟のジョバンニとジェンティーレはヴェネティアの画家だが、ともに今や教科書にも出てくる当時のヴェネツイアの元首とか好敵手トルコのスルタンの肖像画を残しているのだ。
さらに、解説で訳者の平川氏が、あの夏目漱石が「猫」で引用したブラウニングの滑稽詩を紹介しているのはいい。実にいい。