これまで、アートに関するマーケティングの本は論文も含めると数十冊目を通してきたと思いますが、その中でもっとも有用性が高いと思いました。
どこが?とにかく事例が豊富な点です。
私は米国の戦略コンサルティング会社に籍を置きながら大学院でアートマネジメントを学んでいる者ですが、私の目からすると日系の著者が出されたアートマーケティング関連の本は抽象的過ぎるか、紹介事例が陳腐過ぎるかのどちらかのケースがほとんどで、実務でマーケティング戦略を常日頃からプランニングしている立場からすると苦笑してしまう程レベルが低いのが現状です。
それに対してこの本は戦略を語る時の抽象度と、その戦略を紹介するための事例の豊富さ・面白さが非常にバランスがいいと思います。
唯一残念なのが市場の分析が米国のみになっているので、日本にはそぐわない点がいろいろとある(例えば民族や宗教などでの多様性があるために、そもそも市場を一くくりにしにくい)という点でしょうか。この点が補足されていれば言うことなしでした。
アート業界に身をおく人でマーケティングを学びたいと思っている方にはコトラーの本よりもこちらをお勧めしたいと思います。コトラーは決して否定するわけではありませんが、抽象化の度合いが高すぎて、現実にどういったことが出来るか、という点ではあまり役に立ちません。