吉村昭得意の「漂流もの作品」の一つ。
異国の地に漂着した船乗りたちの運命は、劇的であり、同時におそろしく辛いものである。彼らの悲哀を、吉村昭はあますところなく描き出すのだ。
1810年11月、安芸・川尻出身の久蔵はその年の新酒を江戸に送る船に乗り込んだが、潮岬沖で嵐に遭遇。船は大きく壊れて漂流が始まった。海を漂った末、ついに上陸を果たした乗組員は歓喜に沸いた。しかしそこは雪と氷の厳寒の地だった。
ロシアの厳しい気候に苦しみ多くの仲間を失いながらも、一行は故郷に帰れる日が来ることを祈る。折しも緊張関係にあったロシアと日本だったが、ロシア政府の打開策が久蔵たちの運命を変えることになった。
※吉村昭の「漂流もの作品」の全体像は、ブログ「吉村昭作品 読書ガイド」参照。
※本作品に出てくる“五郎治”は、吉村昭『北天の星』の主人公。『北天の星』は本作品を上回る面白さである。