何度話をしても絶対にかみ合わない相手というのはいる。
どっちが良い悪いではなくて「違う」から「わからない」のだ。
仇討ちのために江戸に出てきて二年半、剣術の拙さももちろんだが、
見つけた仇が、今や平凡で幸せな生活を送るのを敢えて討つという
意味を模索し苦悩する主人公・宗左衛門に岡田准一がなりきり、
まさにはまり役。しなやかさと強さを兼ね備え、見えない苦悩を
抱えた未亡人おさえを演じる宮沢りえも美しい。
古田新太はじめ、長屋の住人たちなど、印象に残らない登場人物は
ひとりもいないのだ。
仇討ちはもう諦めたかと思えば、時折見せる鋭い表情に
やはり決行かとハラハラさせられる。「散りぎわは桜のように」が
武士の美学だが、その死に生を超える尊さがあるのかと
引き止めたくもなる。「仇討ちを」という父の遺言を
唯一の形見と言う宗左に「憎しみだけが形見ではないはず」
と諭すおさえの言葉が印象的。
武士として生きている人間と、そうでない世界観を知ってしまった
人間とでは違いすぎるが、その垣根は案外簡単に超えられるものだと
物語の端々に描かれていて、その自然さも心地よい。
派手さがないこの作品の、一貫した穏やかな空気感を
面白くない人にはまったく面白くないと映るかもしれない。
だが、好きな人はかなり好きだと思う。もちろん自分は後者だ。