若きジャン・ジュネの処女作にして自伝的作品。女性役の美しい男娼ディヴィーヌと、男性役の美しい男ミニョンとの同性愛を、緊張感に満ちた文体で、細部にわたって描き出す。中条氏の新訳は、硬質にして精緻な訳文で、張りと気品がある。いままで定訳とされてきた、堀口大學訳と比べてみよう。「ゴロツキのくせに、ミニョンは、明るい額をしていました。これは、女衒(マック)たるべく生まれついた、粗暴で優しい見事な牡でした。いかにも気品があって、いつも裸のように見えました。背を曲げ、まず片足、ついでまた別の片足と、ズボンやズボン下を脱ぐときの、私を悲しませる、あのみっともない身ぶりは、一生する必要がないみたいです。」(堀口訳、新潮文庫)/「ごろつきのくせに、ミニョンは、透明に輝くような顔をしていた。美しく、粗暴で、やさしい牡、生まれながらのヒモだった。立居振舞いが気品にみちているので、いつでも服など着ていないかのような体の動きだったが、唯一の例外は、男がズボンとパンツを脱ぐときの、背中を丸めて、まず片足を上げ、つぎにもう片足、という感動するほどみっともないあの格好だけだった。」(本訳)