吉本興業の創業者、吉本せいさんをモデルにした作品であることは周知のことと思われます。ただし、二代目の林庄之助さんは登場しません。吉本興業の経歴をなぞったものではなく、大阪船場の商人の結晶として花菱亭の多加を描いたのではないかと思いました。ぐうたら亭主を支えながら、次第に商売を覚え、船場の商人として成長して行く多加さんの姿は、本当に感動的です。大阪という土地は、人を惹きつけてやまないものがあります。阪神タイガースへの贔屓を見るまでもなく地元への愛着もとても深いです。その理由がようやくわかったような気がします。大阪と言った場合、御堂筋、船場、北浜界隈を指しているでしょう。江戸期に豪商を配し、独特の商人文化がなった町への憧憬は今もって営々と脈打っています。この作品でも、船場の作法が随所に伺われてとても興味深く、大阪弁の魅力も味わうことができました。お客さんを喜ばすことを家業にしている吉本興業が、船場の伝統を受け継ぐ企業であることを改めて知ることができました。船場の喧騒が聞こえてくるような味わいの深い作品でした。