題名「花のように生きる」は、本文の中に出てくる言葉だが、内容を言い当てていて、良い題名だと思う。クリシュナムルティが神智学協会から訣別して数年後の1930年代前半の講話集で、分量も多い。インドでの講話などでは、多くの神智学会協会の人たちにも語りかけている。当時の人たちも、人間そのものを理解しないままに、束縛とそれからの自由といった両極端ばかりを考えていた、ということか。そして、今の人も同様だということか。それこそがまた新しい束縛にもなっている。後年の講話集のようにあれこれの主題をバランスよく扱っているわけではないが、そのぶん組織、宗教、自由といった主題が集中的に扱われている。熱心な読者にとっては読みたい本だ。でも、翻訳が完璧に成功しているかどうか。あまり一般的でない本に取り組んで翻訳したこと、そして採算に苦労するような本を出版したことは、評価しないわけにはいかない。翻訳の文章には〔〕を用いたり、訳註によって、翻訳しきれない言葉の意味合いを分からせようとしている。この点、良心的だし、とてもいい。微妙なニュアンスも伝わってくる。でも、日本語として流れにくい感じがする。たぶん英語と日本語の一対一では置き換えられない限界なのか。