「鬼ごっこ」「雪間草」「寒い灯」「疑惑」「旅の誘い」「冬の日」「悪癖」「花のあと」と8編からなる短編集ですが、扱っている物語はいろいろです。
「鬼ごっこ」は引退した盗人、「雪間草」は元藩主の側妾、「寒い灯」は姑から逃げ出した女房おせん、「疑惑」は不倫を目撃され殺人に至るおるい、「旅の誘い」は安藤広重、「冬の日」は幼友達が久方ぶりの再会を果たす清次郎とおいし、「悪癖」は酒癖の悪い勘定方平助、表題作「花のあと」は憧れていた初恋の人の仇打ちをする以登女と、性別も階級も年齢も全く違う脈絡のない主人公たちです。
「解説」にもあるように、武家物あり町人物あり、おまけに安藤広重まで登場します。
テーマだけから見ればあまり共通点らしいものはなく、その文章も個々でそのスタイルを異にしています。
それでいながら、何か読み終わった後にほっとさせるものがあり、深い余韻があります。
その作中における自然描写、人物造型も素晴らしく、どの作品をとってもぐいぐい胸に迫ってきます。
現代とは全く違う江戸の時代を描いていながら、日常の生活に繋がる「心」を呼び覚ましてくれる、そんな秀作ばかりの短編集でした。