本作は秀作ぞろいの藤沢周平原作ものの映画でも屈指の傑作。少なくとも女剣士が登場する映画としては、「小川の辺」より優れている。
主役の北川景子(以登)は女剣士ぶりが凛々しく、殺陣も決まっている。
甲本雅裕(才助)は、以登の恋ゆえの孫四朗(宮尾俊太郎)のかたき討ちを温かく見守り、助け、やがて2人は心を通わせるようになる。いわば、以登の孫四朗への愛をさらに大きく包む才助の愛。その愛に助けられていることに気づき、一見さえない才助を見直す以登。江戸時代、武士の世界で心のうちはなかなか明かさないものの、そういった感情がちょっとした表情や所作で的確に表現されている。
以上3人が主役だが、脇を固める俳優も堅実。特に以登の父・國村隼は台詞がほとんどないが、表情だけで娘への信頼がわかるし、市川亀治郎の敵役ぶりもさすが。もう少し憎らしくても良かったぐらいだ。そして、藤村志保を語りだけに使うぜいたくさ。
場面と場面の間に四季の美しい自然(雪が残る遠山、紅葉、薄等)を挟み、時の経過を表す編集も手堅い。そして冒頭とラストの場面を飾る満開の桜。桜が似合う日本映画の秀作の誕生を歓迎したい。