本書は芭蕉の作と明らかに認められる発句を制作年次順に配列している。927句最終句は「病中吟」三句ではなく、年次不詳等も含め、「別ればや笠手に提て夏羽織」
参考として存疑の部576句、その中には金比羅裏参道の芭蕉句碑「花の陰硯にかはる丸瓦」も含まれている。誤伝と明らかにされている発句も初句の五十音順で付け加えている。「おくのほそ道」で曾良の句としている「かさねとは八重撫子の名成べし」もここ誤伝の部208句に入れている。芭蕉の代作と説が多く、その可能性が強いと言われているので、存疑の部に入れるのがいいのかもしれない。
芭蕉発句集編纂には二つの場合が考えられる。一つは門人たちが芭蕉追慕の意をもって遺詠を蒐集しようとする場合、他は蕉風の亀鑑として作句上の粉本とする場合である。また、鑑賞を目的として編まれる場合は、注釈書の形をとっている。その間に存疑・誤伝が混入するのは避けがたい。本書はそれをさび分けようとする芭蕉俳句(発句)集成の貴重なテキストである。