まるで宝の小箱を開けた時のように
芥川龍之介の珠玉の小品が、四つのカテゴリーごとに
読みやすくちりばめられている。
その作品はどれも、ほろ苦く痛々しさを伴って
胸に迫ってくる。
この短編集は日本人ではないワシントン生まれの英訳者、
ジェイ・ルービン氏が編み、村上春樹氏が丁寧な序文を
載せているという点で、実に画期的であり、
読者を喜ばせる作りになっている。
日本の文豪として確実にその名を知らしめた芥川龍之介であるが
私たちがその作品を最初に目にするのは
国語の教科書の教材としてである。そのことが切なくもあったが
村上氏が、とてもあたたかい視点で「文化の共通認識としての機能」と説いている。
作家として活躍したのはわずか12年。
自分で命を絶つその日に向かって、ひた走るような作品群である。
好き・嫌いの次元ではなく、人生の折々に「あぁこのことだったのだ」と
気付くようなテーマを持っている。
発狂するのではないかという恐怖に苦しみながら書かれた後期の作品の
ノスタルジックな外国の風景画のような背景が印象に残る。