芥川賞・直木賞に関しては、とくに近年は出版社との関係もあり
選考も不透明だ。
本書はそういったことを興味本位、ジャーナリスティックに取り上げるのではなく
あくまで「落選した事実」を前面に出し、
なぜ落選したかを解説。しかし声高になるわけではない。
受賞したかどうかに関係なく「良いものは良い」というスタンスで、
受賞しなかった作品の良さを取り上げていく。
太宰治から干刈あがたまで11人、11作品。
佐伯氏自身も候補になりながら、受賞はしていない。
しかし地味だが素晴らし作品を送り出している。
あえて最近の作品(とくに佐伯氏が候補になった前後)を取り上げなかったのは、
表現者としての佐伯氏のプライドでもあり、ある種の配慮だろう。
本文はわかりやすい、語りかけるような「ですます調」。
難解な表現もなく著者の誠実さも感じられる。
佐伯氏ならではの一冊かもしれない。
巻末の「芥川賞候補一覧」。とくにコメントもない一覧表だが、
受賞した作家もそれまで何回も候補作になっていたり……ということがわかり
文壇史の一部を見る思いだった。
できれば誰か、「直木賞編」を出していただきたい。