今朝の新聞に謝晋監督死去のニュースがのっていて驚いた。謝晋監督といえば私にとってはこの87年の作品だ。私が香港でも台湾でもない大陸中国で作られた映画の新鮮な息吹に初めて接した映画であった。文革が終結してから10年ちょっとで、文革に翻弄された庶民を真正面から生々しく描いた映画が中国で作られたことに驚いたものである。ストーリーが波乱万丈。主人公の胡玉音が営む店の米豆腐のおいしそうなこと、その玉音がいやがらせとしか言えない仕打ちを受けて転落し、罰として早朝に、町の石畳の道の清掃を言いつけられ、来る日も来る日もそれを繰り返し、同じ罰を課せられた秦書田と心を通わせるに至る、涙なしには観ることのできない場面、そしてこれが庶民を巻き込む政治運動の最後ではないことを暗示するラストの無気味な場面が特に印象に残る。無能な人達がインテリや家業に成功している人達をいじめているとしか思えない文革の実態、党の中でうまく立ち回った人が権力を握る一党支配の現実にはゾッとする。その後天安門事件のような政治上の事件もあったし、経済成長の一方で党指導者の腐敗のニュースも目にする。そういった中国の現状を理解するためにも、新中国成立の後に何があったかを知り、苦難の連続に耐えた庶民のヴァイタリティーを実感できるこの映画は必見の作品だと信じる。
最後に、このような名作を遺してくれた謝晋監督の冥福を祈ります。