《乱歩は好きで丸尾末広の作品はあまり好きではない人の評価です》
私自身は、絵も含めて丸尾末広の漫画の素晴らしさを認めつつも好みではない。しかし彼の漫画は好きとか嫌いとかを超えた強烈な個性があるのは事実だ。彼のフォロワー的な漫画家も多くいるが誰も丸尾を超えることができていないように思う。
この作品を書店で見かけたときにまず感じたのは、“はまりすぎ”・・・、ということだった。正直購入意欲は涌かなかった。しかし、乱歩のあの「芋虫」がどう描かれているのだろう、読んでみたい、という欲求は抑えきれず結局購入するに至った。
読み終わっての感想は二点。
一点は、やはり丸尾末広という漫画家は素晴らしいということだ。自分が乱歩の小説を読みながら想像していたとおり(さすがにバナナは想像もつかなかったが・・・)の世界が描かれていた。ただ、「芋虫」に限らず乱歩の文章は映像的なので読み手もそこに書かれている状景を想像することが容易ではある。
もう一点は、一点目で素晴らしいと書いた理由がそのまま裏返しの評価にもつながったということだ。つまり、あまりにも、はまりすぎていて、逆に物足りないというおかしな思いを抱いたことだ。例えば、自分の好きなバンドでも、そのバンドが他人の曲をカバーしたとき、そのカバーバージョンがあまりにもオリジナルに忠実だったとき、そのカバーに新しい発見を得ることもなく、なんとなくつまらない。うまく表現できないが、そんな思いを抱いてしまった。
こうして、丸尾末広がビジュアル化してみると、戦時中にこの作品を発表(その後反戦小説という理由で発禁)した江戸川乱歩の凄さが改めて感じられた。