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色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記
 
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色のない島へ―脳神経科医のミクロネシア探訪記 [単行本]

オリヴァー サックス , Oliver Sacks , 大庭 紀雄 , 春日井 晶子
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)

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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

色覚のない人々の驚くべき視覚生活とは?先天性全色盲、原因不明の神経病―特異な風土病とともに生きる人々の姿を感動の筆致で描く医学エッセイ。

内容(「MARC」データベースより)

先天性全色盲の患者が集団で暮らすピンゲラップ島、原因不明の神経病が多発しているグアム島…。「島」という環境ゆえに特異な風土病が残るミクロネシア。奇妙な病気とともに生きる島の人々の日常生活を心暖まる筆致で描く。

登録情報

  • 単行本: 318ページ
  • 出版社: 早川書房 (1999/05)
  • ISBN-10: 4152082259
  • ISBN-13: 978-4152082251
  • 発売日: 1999/05
  • 商品の寸法: 19 x 13.8 x 2.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
『レナードの朝』の著者として知られているオリバー・サックスの紀行文学である.出版されてすぐに購入しながら書庫で眠らせておいた本書を10年ぶりにひもといてみた.
 第1部を占めるのは,ミクロネシア連邦の東カロリン諸島の環礁島のひとつピンゲラップ島の住民に多い常染色体劣性の全色盲に関する記述である.Pingelapese achromatopsia (ACHM3, MIM#262300)についてはロックフェラー大学のWinick JD博士らが1999年にゲノム連鎖解析により染色体8q21-q22に疾患遺伝子が存在することを特定し,その後網膜錐体細胞の情報伝達経路を担う蛋白の遺伝子異常が証明されている.本書はそのような特異な遺伝性疾患の解説というより,紀行文としての記述に重点が置かれている.ハワイから飛行機を乗り継いでピンゲラップ島に至る珍道中や,軍事的に秘密のベールに包まれたミクロネシアの知られざる島々,その一方で観光地化されながらも豊かな熱帯の植生に恵まれた島嶼住民ののんびりとした生活が活写されている.
 第2部はグアム島のALS/Parkinsonism complexを巡る風土病についてのお話しである.現在ではALS/Parkinsonism/dementia complexはタウノパチーとしての疾患群に包括され,遺伝的素因を巡る最新の知見が明らかにされつつある.この奇病の発見と疫学的調査の歴史的過程は興味深い.風土病の解明にかけた科学者たちの野心とは対照的に,研究者から好奇の対象とみなされながらも病気を達観して生きるChamorroの人々の姿がよく描かれている.最近になって本書にも現地で患者のケアに生涯を捧げる神経内科医として登場しているJohn C. SteeleがNeurology誌(2008;70:1984-1990)にソテツ毒素説との関連についての総説を発表しており一読の価値がある.文明の介入により滋味豊かな島の風土や島民の行動は変容してゆき,それとともに近親婚から解放され疾患遺伝子や疾患感受性遺伝子も希釈されていくのであろう.
 最後の章では著者の少年時代からの植物進化への興味をみたす南洋蘇鉄の記述に捧げられている.神経科学と植物学的分類学,植物由来の配糖体の毒素学との関連や,『蘇鉄のすべて』(栄 喜久元)にも書かれているように,琉球弧の島々でも飢饉のときの非常食としてソテツの実は食用に供され,サイカシンが原因の食中毒を引き起こしてきた歴史が日本にもある.縦軸である神経難病の記述と,通奏底音となっている島のソテツの話が横軸となりオリバー・サックスならではの奥行きの深い叙述となっている.この本を通読することでグアム島やロタ島の風景の見方が少し変わるかもしれない.
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16 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By jomi
形式:単行本
全体を通じて、著者の豊かな視点と人に対する暖かな眼差しの感じられる、素敵な紀行文である。
特に個人的には日本人に馴染み深いグアム島の、観光地としてではなく固有の文化という知られざる一面に触れ、興味深く感じた。

そして同時に神経医学的示唆にも富んでいる。また、現代科学の持つ問題点なども素直に記述してあるところに、著者の人柄が感じられる。

惜しむらくは、前書きで著者自身のべていることだが、前半と後半が異なる機会についてのものであり、一つの本にまとめてある意味がみえないことである。

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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Tiare
形式:単行本
不思議な本である。ノンフィクションなのだが、小説を読んだような印象を受ける。同様な経験を、レイチェル・カーソンの海のシリーズを読んだ時にも持った。まるで叙事詩を読んでいるようだった。
 それほど、美しい文章と記述対象への深い洞察に満ちた本だ。

 ミクロネシアのピンゲラップ島は12人に一人が完全色盲である。世界的には3万人に一人と言われている。
 脳神経科医で神経人類学者の著者と、ノルウェーに住む完全色盲で生理学者で心理物理学者のクヌート・ノルビー、そして眼科医のロバート・ワッサーマンがピンゲラップ島を訪ねる「物語」。

 ピンゲラップ島へ辿り着くまでの紀行も興味深く、別の項で書きたい。地球の反対側からやってきた完全色盲者クヌートの行動観察記述がピンゲラップ島への導入となる。著者には見えないもの、気がつかないものがクヌートには見え、わかるのである。
 ピンゲラップ島にたどり着いたとたん、クヌートは完全色盲の子供たちに取り囲まれる。彼らにはわかるのだ。
 島では完全なマイノリティになっていない完全色盲者たちは自分の居場所があるようである。目が暗順応する日没、日の出、月明かりの夜が行動しやすい。彼らは夜釣りの漁師として極めて優れていて、水の中の魚の動きや、魚が跳ねるときにひれに反射するわずかな月の光までよく見える、という。

 しかし、完全色盲だと、黒板の字が認識できず、勉強も就職も諦めなければならない。それでも適切な補助があれば社会に出ることも可能だ。ポーンペイ島に戻ってきた一行は現地の医者が完全色盲の事やピンゲラップ島の話をほとんど知らなかったことに驚く。ポーンペイ島では急を要する病への対処に、限られた医師が対応するのが精一杯である。完全色盲者に手を差し伸べる余裕はない。

 以前紹介した『フラジャイル』を裏付けるような内容である。色のある世界が色のない世界よりも優れている、という単純な話ではない。小さな島社会だと、私たちが日頃見失っている、気がつかないマイノリティの存在が大きく、弱者とは何かを考えさせられる。
 同時にアンビバレントではあるが、弱者への徹底的な無視や差別も、ある。

 この本は、部外者が(特に専門家が)島社会をどう認識し、どのように対応すべきかも多くを教えてくれる。島、太平洋島嶼国、ミクロネシアへの入門書として1番にあげたい作品だ。
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